話しながらの歩きが苦手になると、認知症リスクが高い可能性

「人は足から老いる」という言葉があります。

普段何気なく歩いていますが、歩く動作ひとつにも、
脳のさまざまな部位が複雑にはたらいています。

そのため、脳の認知機能が衰えると、
歩く動作にも影響が現れることになりますが、
歩く際に○○ができないと認知症になりやすい
可能性があることがわかりました。

それは「ながら歩き」です。

ここに、東京都健康長寿医療センター研究所と
カナダのウエスタンオンタリオ大学医学部の
共同研究グループによる研究報告があります。

簡単な暗算や会話など頭を使いながら、歩行しているとき、
歩行速度が遅くなる高齢者ほど、「嗅内野」という
脳の部位の萎縮が進んでいることが明らかになりました。

嗅内野は、海馬の入り口に位置し、
大脳皮質で処理された情報を海馬に伝える役割を
担っていると考えられています。

そして、嗅内野はアルツハイマー病の影響を受けやすく、
海馬以上に萎縮が目立つことが過去の研究から確認されています。

つまり、歩くだけのときは普通のようにみえても
ながら歩行時のときは、通常時と比べて、
歩行速度が遅くなったり、立ち止まったりするようなら、
嗅内野の萎縮が進んでいる可能性があり、
その背景にはアルツハイマー病の進行が考えられます。

実際に嗅内野の大きさを確認しようとすると、
MRIなどの大がかりな検査が必要になります。

しかし、ながら歩行時の歩行速度を確認するのであれば、
間接的になりますが、嗅内野が萎縮している可能性を
容易に把握でき、認知症の早期発見につなげることができます。

また、家族と会話をしながら歩くのであれば、
本人にあまり気づかれずに認知症の発症リスクを
確認することも可能でしょう。

ただ、元々複数のことを同時に行うのが苦手な方もいます。

ながら歩行時の歩行速度が遅いからといって、
嗅内野が”必ず”萎縮しているとは限りません。

また、要領のいい人はながら歩行に慣れてしまって、
アルツハイマー病の影響で嗅内野の萎縮がはじまっているのに、
ながら歩行時の歩行速度に変化があまりみられないことも考えられます。

ながら歩行時の歩行速度が、嗅内野の萎縮から影響を受ける
メカニズムは未解明な部分があり、さらなる研究が期待されています。

そのため、ながら歩行時の歩行速度の低下はあくまでも目安と考えて、
何か違和感を感じたときは、専門機関に受診するのが勧められます

なお、社会問題にもなってきている
スマートフォンを操作しながらのながら歩きは
危険が伴うため、誰彼を問わず推奨できません。

ご注意くださいませ。

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【文献】
Sakurai R, et al.
“Entorhinal Cortex Volume Is Associated With Dual-Task Gait Cost Among Older Adults With MCI: Results From the Gait and Brain Study”
J Gerontol A Biol Sci Med Sci. May 15 (2018)

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