親子間における認知症リスクの関係性


「血は水よりも濃い」ということわざがありますが、
親子間の関係は深く、何かと子は親に似るものです。

こと認知症ではどうでしょうか?

親の認知症は子にも影響するのでしょうか?

オランダの研究者らによる調査研究は、
興味深いことを報告しています。

平均年齢64歳の2,087人を対象に約12年の追跡調査を行い
認知症リスクと親の認知症歴との関係を調べたところ、
以下のことがわかりました。

・親が80歳未満で認知症と診断された子の認知症リスクは高い

・認知症につながる脳血流の低下や脳の病変と
 親の認知症歴は関連していた

・親が80歳未満で認知症と診断されていた場合、
 子の認知症診断時の年齢は、親の場合と強い関連があった

・親が80歳以上で診断されていた場合、
 親と子の認知症診断時の年齢について
 特に目立った関係は見出されなかった

これらの研究結果を踏まえて考察しますと、
認知症に影響する「遺伝子」と「環境(生活習慣)」を
子は親から受け継ぐせいかもしれません。

まず子は両親から半分ずつ遺伝子を受け継いで誕生し、
親の生活習慣は子に影響を与えます。

同じ遺伝子を持った親子が似た生活習慣を送ることで、
認知症の発症時期が似てくるものと思われます。

ただ、一卵性双生児を対象にした研究などは
遺伝より生活習慣のほうが認知症の発症リスクに
大きな影響を及ぼしていることを示しています。

また、認知症の原因の7割近くを
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が占めていますが、
いずれも「生活習慣」が大きく影響しています。

研究が進むことで、親子間で認知症リスクが関連する
詳細なメカニズムが解明されてくると思いますが、
認知症への生活習慣の影響は軽視できるものではありません。

認知症予防においては、ことさらに遺伝を気にするよりも、

◎親が早くに認知症になった
 →子は生活習慣を改善することで、認知症を遅らせる可能性あり

◎親が晩年に認知症になったもしくはならなかった
 →子はそのことに慢心せず、生活習慣を見直してみる

と捉えるほうが、認知症予防に近づくと思います。

「子は親の生き様から学ぶ」といいますし、
生き様は資産家や事業家でなくても誰でも残せる遺産です。
(生き様の場合、争続も起こりません)

ご自分が認知症予防(生活習慣の改善)に取り組む姿は
わが子によき影響を及ぼし、認知症予防にもつながることでしょう

————————–
【文献】
Frank J Wolters, et al.
“Parental family history of dementia in relation to subclinical brain disease and dementia risk”
Neurology. vol.88, Issue17 (2017)


昼寝も過ぎれば認知症リスクが高くなる可能性


年齢とともに睡眠は変化します。

高齢になると若い頃に比べて、早寝早起きになり、
健康な方でも睡眠が浅くなります。

そのため、高齢者では昼寝の習慣は一般的ですが、
昼寝も過ぎると認知症リスクが高まるとする研究結果が
発表されました。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らが、
65歳以上の高齢男性2,751人(2年以内の認知症発症者は除外)を対象に
昼寝時間と認知症の発症リスクとの関連を調べました。

1日あたりの累積昼寝時間が

・30分未満
・30~59分
・60~119分
・120分以上

の4つのグループに分けて、比較調査しました。

昼寝時間30分未満のグループを基準にすると、
認知症の発症リスクがそれぞれ

・30~59分のグループ   17%UP
・60~119分のグループ  30%UP
・120分以上のグループ  80%UP

と高くなっており、昼寝時間が長くなるほど、
認知症の発症リスクが高まることが示唆されています。

なお、今回の研究では、
高齢女性や中年男女などは調査研究の対象外でしたので、
すべての人にこの結果があてはまるとはかぎりません。

ただ、昼寝をし過ぎると、
日中の活動量の減少や生活リズムの乱れなどから
夜間睡眠の質が下がってしまいます。

高齢者の睡眠特性(早寝早起き、睡眠が浅くなる)を考えますと、
昼寝のし過ぎは避けたほうがいいかもしれません。

また、睡眠障害によって夜にうまく眠れていないため、
昼寝をし過ぎている可能性も考えられます。

高齢者では、
狭心症や心筋梗塞による胸苦しさ、
うつ・認知症・アルコール依存症などによって
睡眠障害が生じることがあります。

睡眠障害が生じている場合は、原因を突き止め、
原因に応じた対処が必要になってきます。

この場合は専門医への早めの受診が勧められます。

————————–
【文献】
Y Leng , et al.
“Objectively Measured Napping And 12-year Risk Of Developing Dementia In Older Men”
Sleep, Volume 41, Issue suppl_1, 27 April (2018)


女性は赤ワインを飲み過ぎないほうがいいかも!?


ぶどうの皮も使って作られる赤ワインには、
「ポリフェノール」が豊富に含まれており、
これが赤ワイン特有の渋みや色味を作り出しています。

ポリフェノールには抗酸化作用や抗炎症作用があり、
ポリフェノールを摂取することで、脳細胞が守られ、
認知症予防に役立つと注目されています。

お酒をたしなむ人の中には、認知症予防と称して
好んで赤ワインを飲んでいる人もいるようです。

ただ、最近発表された研究報告によると、
女性の方は赤ワインを飲み過ぎないほうがいいみたいです。

スイス・チューリッヒ大学の研究者らが
どの単一食品の摂取頻度が高い(低い)と、
認知症の発症と関係があるのかを調べました。

世の中には、数は多くないものの
「○○を食べて(飲んで)認知症予防」
という食品が知られています。

実際のところ、こうした食品が
アルツハイマー病の発症や言語記憶の低下と
関連があるのかどうかを調べてみたのです。

ドイツの75歳以上の高齢者2,622人を対象に
生活習慣などを10年にわたって追跡調査を行いました。

また、調査研究の対象となった食品は、
赤ワイン、白ワイン、コーヒー、緑茶、オリーブオイル、
新鮮な魚、果物・野菜、赤身肉・ソーセージです。

さて、分析の結果、赤ワインの摂取頻度が高いと
アルツハイマー病の発症率が低いことがわかりました。

実はこの研究では興味深いことに男女で差があり、
男性ではアルツハイマー病の発症率が約18%減少したのに対し、
女性では逆に発症率が約15%増加したのです。

しかも、白ワインの摂取頻度が高い女性の場合、
記憶の低下がみられました。

また、今回の研究では、赤ワインにおいて
男性のみアルツハイマー病のリスクが低下しただけで、
それ以外の単一食品において認知機能低下を抑える
効果があるとは認められませんでした。

研究者は、赤ワインの結果で男女差があったのは、
女性はアルコールの悪影響を受けやすいためではないか
と考えています。

ヨーロッパ系の人を対象にした研究ですので、
アジア系である日本人にどこまであてはまるかは
検討の余地があります。

今回の研究結果とアジア系のお酒に弱い傾向を踏まえますと、
特に日本人女性は赤ワインの飲み過ぎには注意したほうがよさそうです。

認知症予防を考える際、赤ワインだけに固執するよりも、
多品種食品の摂取、つまり、バランスがよい食事を
心がけたいところです。

————————–
【文献】
Karina Fischer, et al.
“Prospective Associations between Single Foods, Alzheimer’s Dementia and Memory Decline in the Elderly”
Nutrients. Jun 29 (2018)


「日本人よ、立ち上がれ」座りすぎが脳に悪影響をもたらすかも!?


今世界では「座りすぎ」が
健康に及ぼす悪影響に注目が集まっています。

例えば、オーストラリアでは、官民一体となって、
座りすぎに警鐘を鳴らすキャンペーンを展開し、
職場では1日2時間以上立って過ごすよう勧めています。

座りすぎは心臓病やがん、早死などの
さまざまな健康問題と関連があることが、
数多くの研究から明らかになっています。

そして、座りすぎは脳に悪影響を及ぼす可能性がある
とする研究結果も発表されています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが、
正常な認知機能の45〜75歳までの男女を対象に、
座位時間と運動が脳にもたらす影響を調べました。

分析結果から、座っている時間が長い人は
脳の内側側頭葉の厚さが薄い傾向にあることがわかったのです。

内側側頭葉には記憶を司る海馬があり、この部位が薄くなると、
もの忘れや認知機能障害といった症状が現れるようになります。

つまり、内側側頭葉の部位の厚さを見ることで、
認知症の発症リスクをみることができるのです。

座りすぎると脳に悪影響がある可能性がわかったわけですが、
この研究からはもう一つ衝撃的なことも判明しました。

内側側頭葉の厚さと運動の強度との間には
相関関係がなかったというのです。

研究者たちはこの結果を、
座りすぎによって脳が受けてしまったダメージは
運動しても帳消しできないかもと考えています。

なお、別の調査研究では、
有酸素運動で海馬が大きくなる
という報告があります。

今回の研究では
「運動は座りすぎの影響を相殺する効果がない可能性」
が示された点には興味深いものがあります。

今後のさらなる調査研究が
メカニズムを含めて詳しいことを
明らかにしてくれることでしょう。

以上、今回の研究結果を踏まえると、
週末はしっかりと運動している人も
まったく運動している暇がない人も
日中の座りすぎには注意したほうがよさそうです。

特に働きすぎの傾向がある日本人では、
平日に座っている時間は世界一長いといわれています。

世界20カ国の平均が約5時間に比べて、日本人は約7時間です。
(Bauman A, et al. Am J Prev Med. 2011)

仕事でずっと座りっぱなしのお父さんは、
どれだけ運動する時間を増やそうかよりも
まずは座る時間を減らすことから考えたほうが
いいかもしれません。

具体的に何時間から座りすぎになって
健康被害のリスクがどの程度高まるのかについては
まだ研究段階のようです。

座りすぎを予防する目安としては、
30分〜1時間に1回は立って動くことを
推奨する研究者がいます。

立つ時間になったら、飲み物を取りに行ったり、
同僚との雑談をはさんだり、トイレに行ったりなど、
用事を作って立つようにするとよいでしょう。

スマホの時計アプリなどを使うと、
一定時間ごとにアラームを鳴らせますので、

座りすぎの防止に役立ちます。

ちなみに、喫煙所に行ってたばこ休憩をするでは
あまり意味がありませんので、その点は注意が必要かと思います。

また、なかなか立ち上がれないときは、

座ったままできる
・かかとの上げ下げ
・つま先の上げ下げ
・膝のばし
などの脚の運動を心がけるとよいでしょう。

————————–
【文献】
Sidarth P, et al.
“Sedentary behavior associated with reduced medial temporal lobe thickness in middle-aged and older adults”
PLoS One. April 12 (2018)