教育歴に関して心がけたい2つの認知症予防


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「15歳までの教育」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

15歳までの教育、すなわち教育歴については、
いくつかの調査研究から、教育歴が長いと
認知症の発症リスクが低下することがわかっています。

その理由のひとつとして、
人は頭を使うことで神経ネットワークが強化され、
認知力を蓄えられるという考えをあげることができます。

例えばお金の場合、若い頃に蓄えた貯金がある人ほど、
老後の貯金を切り崩しながらの生活でも余裕があります。

認知力も頭を使うことで貯金のように蓄えることができ、
蓄えた分、負けしろが増えることになります。

認知力の蓄えがある(=負けしろがある)人は、
日常生活に支障が出るレベルまで症状が進行するのに、
その分時間がかかると考えられています。

この概念をひと言でまとめた専門用語があり、
「認知予備力」といいます。

教育歴が長い人ほど、頭を使う時間が長くなり
結果、認知予備力が高くなっていると思われます。

とはいえ、教育歴は過去のことですから、
今さらいわれても、、、というお気持ちはわかります。

ですが、どうぞご安心ください。

歳をとってから知的活動を行っても、
認知機能の低下を遅らせることができるという研究があります。

まずひとつめの認知症予防のポイントとして

【(いくつになっても)頭を使うこと】

を習慣にしたいものです。

また、人は教育をとおして、
情報の取り扱い方を身につけていきます。

情報の取り扱い方といっても、
4つの要素から成り立っており、
実際には総合力が問われます。

具体的には、

1)あふれる情報の中から、ときには口外されない情報からも
  自分が必要とする情報を「入手」できる

2)その情報を正しく「理解」できる

3)その情報が信頼できるかどうかを「評価」できる

4)評価した情報を「活用」できる
  つまり、意思決定をして、行動に移すことができる

というインプットからアウトプットまでの
一連のプロセスを実行できる能力のことです。

この能力を健康に関する情報にも使うことで、
人は生涯にわたり健康的な生活を
維持・向上させることができるようになります。

ちなみに、健康情報を適切に取り扱える能力を
「ヘルスリテラシー」といいます。

教育歴が長い人は、ヘルスリテラシーの能力が
総じて高い傾向にあると考えられます。

なお、当たり前のことですが、
過去の教育歴は今更変えることはできません。

ですが、教育歴の長い人が身につけている
ヘルスリテラシーは今からでも習得できます。

ふたつめの認知症予防のポイントとして

【ヘルスリテラシー(健康情報の取り扱い方)を高める】

をあげたいと思います。

以上をまとめますと、
教育歴に関する認知症予防としては、

■頭を使うこと

■ヘルスリテラシーを身につけること

を推奨することができます。

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【文献】
Sharp ES, et al.
“Relationship between education and dementia: an updated systematic review”
Alzheimer Dis Assoc Disord 25 :289-304 (2011)


認知症の9つの生活習慣リスク


2017年7月16日〜20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、最も評価の高い世界五大医学雑誌のひとつである
ランセットの委員会が以下の声明を発表しています。

「認知症の発症リスクに影響する生活習慣を改善することで
 世界中の認知症の3分の1以上が予防可能である」

この声明の発表にあたり、24人の専門家が、
認知症の危険因子、治療やケアに関する研究論文を分析し、
総合的に評価を行いました。

そこから導き出されたものをまとめて、
十分に信頼性の高い要因として、ライフステージごとに
9つの生活習慣リスクをあげています。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期〜高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

———————————————

この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

また、ライフステージごとに
生活習慣リスクが分けられていることから
認知症予防は高齢者だけが行うものではないこともわかります。

生活習慣はよくも悪くも、
時間が経つごとに影響が積み重なり、
その影響は大きくなります。

むしろ、40代、50代のお父さん世代にこそ、
認知症予防に取り組んでいただきたいといえます。

「難聴」が認知症の発症リスクであることは、
最近になって注目を集めていますが、割と見過ごされがちです。

高血圧や糖尿病などの疾患は、
難聴になるのを早めますので、
生活習慣病の改善に努めることが大切になります。

また、日頃から大音量で音楽を聴かないことも
難聴予防を考えるうえでは効果的です。

そして、もし難聴の場合は放置することなく、
適切な補聴器の使用も大切になってきます。

「15歳までの教育」については、
日本人でしたら多くの人はクリアーしていると思います。

ですが、本質的に大事なことは、
教育をとおして頭を使ってしっかりと考えること。
(スマホばかりしている場合ではないのです)

そして、欲しい成果に対して、
最適な方法で、適切な努力をするという
習慣を身につけることです。

この習慣は後天的に身につけることができますので、
教育のことを今さらいわれても過去のことだしと、
ことさらに落ち込む必要はありません。

なお、認知症との関係が指摘がされている
「食事」「飲酒」「睡眠」については
エビデンス不足で今回の声明には含まれていません。

ですが、今後調査研究が進めば、エビデンスが集まって、
リストに載る可能性は十分にあります。

何より「食事」「飲酒」「睡眠」は、
他の疾患やQOL(人生の質)にも関係してくる要因ですので、
軽視していいわけではありません。

まずは9つの生活習慣リスクについて、
自身や家族がどれほど押さえているか
一度生活習慣をチェックされるといいでしょう。


医師が自分自身のために実践している認知症予防


認知症になると、記憶力や注意力などの認知機能が低下して、
日常生活に支障をきたすようになります。

少し前まで、認知症は治療も予防もできない
「不治の病」とされてきました。

ですが、近年は研究が進んで、
生活習慣によっては認知症の発症を遅らせる可能性がある
と考えられています。

認知症予防につながる生活習慣としては、
「運動」「食事スタイル」「知的活動」「人とのつながり」
が効果的とわかってきました。

ですが、実際のところ、

「認知症予防にいいのはわかったけれども、
 どれから取り組んだらいいの?」

と迷われる方も多いようです。

まずは自分がやってみたいもので、
やれる能力や環境があるものから取り組んでみる
・・がその回答になりますが、
何かしらの指針は欲しいものです。

餅は餅屋ということばがあります。

健康のことを取り扱っている医師が
取り組んでいる認知症予防のメニューを知ることは、
認知症予防を選ぶ際の指針のひとつになるでしょう。

日経メディカル Onlineが
医師会員向けに実施したアンケートによると、
以下の結果でした。

「自身の認知症予防のために取り組んでいること」

 1)運動       39.9%
 2)食生活の改善   29.2%
 3)趣味・娯楽の充実 18.7%
 4)禁煙       15.5%
 5)睡眠改善     14.6%
 6)節酒       12.7%
 7)学習療法     10.2%

   N=3,854人(複数回答)

 (出典:日経メディカル Online)

回答した医師の6割は自身の認知症予防のために
何らかの取り組みに励んでいますし、
特に「運動」に取り組んでいる医師が多いようです。

家族の言うことには聞く耳を持たない人でも、
医師の言うことには素直に聞く人もいます。

「医師が取り組んでいる認知症予防の中でも
 一番人気は運動みたいですよ」

という情報をきっかけに、
運動に取り組む人がいるかもしれません。

ある一言をきっかけに、
人がやる気を出す事例はたくさんあります。
(逆も真なりで、ある一言をきっかけに
 やる気をなくすケースもありますが、、、)

医師が自分自身のために実践している認知症予防は
行動してもらうときの働きかけのひとつとして、
頭の片隅に入れておくとよいでしょう。

行動してもらう働きかけのレパートリーは
多いに越したことはないと思うのです。


一晩の寝不足も積み重なれば、認知症の発症リスクを高める可能性


認知症の原因は70近くあるといわれていますが、
その半分近くをアルツハイマー病が占めています。

アルツハイマー病の原因物質として考えられているのが
アミロイドβというタンパク質です。

アルツハイマー病の脳内では、
アミロイドβが結合したものがみられます。

これが結果的に神経細胞を破壊し、
記憶障害などの認知症の症状を引き起こしていると
考えられています。

アミロイドβは脳の活動に起因して生産されるため、
高齢者だけでなく、若い人の脳内でも生じており、
その生産自体をゼロにすることはできません。

ゼロにできないまでも
アミロイドβの生産量を少しでも抑えれば、
認知症の予防につながるのでは?という考えで、
これまでは研究が進められてきました。

しかし、最近の米国の研究によると、
健常な人でもアルツハイマー病の人でも
アミロイドβが生産される量には
さほど違いがないことが指摘されています。

では、健常な人とアルツハイマー病の人とでは
何が違うのかというと、アミロイドβを排出する力に
差があったのです。

そして、アミロイドβの排出が促進されるのは
睡眠時であることが明らかになっています。

つまり、しっかりと睡眠を取ることは
アルツハイマー病の予防につながることになります。

とはいえ、睡眠が大切だとわかってはいても、
お父さんのように現役バリバリでお仕事をされていると、
寝る間を惜しんで、お仕事を頑張ることもあるかと思います。

「わしもまだまだ若いけんね」と、
一晩や二晩ぐらい寝なくても大丈夫という
お気持ちがあるかもしれません。

認知症予防の観点からすると、
そのようなお父さんには、
どきりとする調査研究があります。

健康な人でも一晩の寝不足で、
アミロイドβが増えることを示す実験結果が出たのです。

米国在住の睡眠障害がない健康的な
17人(35歳〜65歳)が協力した実験があり、
一晩の寝不足がアミロイドβの濃度に
どのような変化を及ぼすのかを調べました。

ここからは少し脱線して、
人の睡眠状態について
簡単に理解していきたいと思います。

まず人には2種類の睡眠状態、
レム睡眠とノンレム睡眠があると考えられています。

レム睡眠は、夢をみているときの状態で、
脳を目覚めさせる準備の眠りともいわれています。

ノンレム睡眠は、脳を休ませるための眠りで、
さらにS1〜S4の4段階に分けられています。

ノンレム睡眠のS3とS4の段階は、
特に深い眠り(徐波睡眠)となっており、
ここの段階でしっかりと眠れることは、
熟睡につながっています。

そして、レム睡眠とノンレム睡眠を
一晩のうちに約90分の周期で交互にくり返しながら、
人は睡眠をとっています。

その米国の実験では、徐波睡眠に入ったときに
ブザーが鳴るようにして、熟睡を妨げるようにしました。

このように睡眠が妨げられた翌朝には、実験に参加したどの方にも
疲労感があり、熟睡感を感じることもありませんでした。

これは睡眠時間は普段どおりの方でも同様の感想でした。

ゆっくりと眠った翌朝と熟睡が妨げられた翌朝との
アミロイドβの濃度を比較したところ、後者のほうが、
アミロイドβが増えていることがわかったのです。

また、徐波睡眠が妨げられた程度が大きいほど、
アミロイドβは増える傾向にありました。

つまり、一晩の寝不足でも、
アミロイドβが蓄積する可能性があるということです。

一晩の寝不足でもそうなのですから、
これが何十日間も続きますと、アミロイドβが
どんどん蓄積していくことは十分に考えられます。

アミロイドβはアルツハイマー病を発症する20年以上前の
40代、50代から蓄積し出すともいわれています。

40代、50代なら多少の寝不足でも
身体はまだまだ大丈夫かもしれません。

睡眠は身体よりも脳のために必要な休息となっており、
アミロイドβを排出する時間にもなっていますので、
しっかりと寝ることが大切です。

お仕事人間のお父さんにおかれましては、
就寝もひとつのタスクと捉えて、
量質ともに最高のパフォーマンスとなるように、
しっかりと休まれてほしいと思います。

————————–
【文献】
Yo-El S. Ju, et al.
“Slow wave sleep disruption increases cerebrospinal fluid amyloid-β levels”
Brain. Published online July 10 (2017)


睡眠薬は認知症の発症リスクをあげる?さげる?


不眠で悩んでいる人は、
国内に2000万人以上おり、
睡眠薬常用者は約500万人にのぼる
といわれています。

睡眠薬を処方されている方の中には

「睡眠薬を飲んでいると、ボケてしまう?」

という不安をもっておられる方が
少なからずいらっしゃいます。

まず前提として、病院で処方される睡眠薬については、
動物実験や臨床試験を経て安全性が確認されています。

短期間の服薬によって、
認知症を引き起こすような神経障害を
直接引き起こすことはありません。

睡眠薬が認知症の危険因子になるかどうかについては、
さまざまな研究者が調べていますが、現時点では
何ともいえないという答えになります。

いくつかの調査研究の報告をまとめますと、
睡眠薬の服用は
1)認知症の抑制因子である
2)認知症の発症とは関係がない
3)認知症の危険因子である
という報告がそれぞれにあり、
「どっちやねん」という感じになっています。

睡眠薬が認知症の発症リスクをあげるのかどうかは、
調査研究がさらに進むのを待つ必要があります。

一義的に結論をくだせないには、
しかたがない面があります。

不眠と睡眠薬とは切っても切れない関係にあります。

睡眠薬の認知症への影響を調べる際、
不眠から影響を受けているのか、
それとも睡眠薬から影響を受けているのか、
分けて調べるのが難しいという事情があるのです。

なお、睡眠薬を飲まざるを得ないようにしている要因は、
認知症の危険因子であることが指摘されています。
(不眠、不眠を誘引する生活スタイルや疾患など)

不眠を改善することは、
将来の認知症の発症リスクを抑えることにつながります。

睡眠薬を服薬しないで、不眠を解消したいという方には、
「CBT-I」という医学的効果が認められた、
薬を使わない認知行動療法があります。

CBT-Iでは、その人の生活習慣や考え方に焦点をあて、
不眠の症状をもたらすような阻害要因があれば、
それを修正することで、不眠を解消しようとします。

「ヘルスケア産業の最前線2017」で報告された
先進的な取り組みでは、体内時計を可視化して、
睡眠を改善するサービスが紹介されていました。

参考URL:株式会社O:(オー)
http://o-inc.jp/

睡眠の質は、人生の質に深く関係し、
認知症の発症とも関係しています。

不眠の解消に向けて取り組む必要がありますが、
睡眠薬の服薬が認知症の発症に及ぼす影響が気になる人は、
こうした睡眠改善サービスを利用するのも手でしょう。

————————–
【文献】
田ヶ谷浩邦「睡眠薬は認知症の危険因子か?」
老年精神医学雑誌 28 : 347-352 (2017)

 


運動不足とテレビ漬けは中高年からの認知機能に差を生じさせる


お父さんにおかれましては、
平日仕事が終わって自宅に帰られてから、
また休日のときは何をされておられますか?

ゴロゴロしながらテレビばかり観ておられますか?

若い時からそのような生活スタイルでしたら、
少しどきりとする調査研究があります。

米国の若い年代18〜30歳の3,247人に対して
25年間にわたり追跡調査を行い、
定期的に認知機能を評価しました。

追跡調査のスタート時は若かった人も、
25年目を迎えた頃には、皆さん中年期に突入しています。

運動不足かつ長時間のテレビ視聴(1日3時間以上)の人は
そうではない人と比べて、認知機能の処理速度と実行機能に
悪影響があることがわかりました。

中年期もこのまま過ごして高齢期を迎えた場合、
認知機能はさらにどうなるのかについては、
十数年後の調査結果を待たなければなりません。

ですが、素人目にも容易に想像がつき、
認知機能はさらに低下して、場合によっては
日常生活にも支障が出ていることでしょう。

25年前にスタートした調査研究ですので、
調査項目は「テレビ視聴」でしたが、
今では「スマホ」もこれに該当するかと思います。

テレビ漬け、スマホ漬けは運動不足を招きやすく、
運動不足は認知症の危険因子のため、注意が必要になります。

テレビ漬け、スマホ漬けとなっている人で、
意外と多いのがルールを決めていないこと。

ルールという制限を設けてあることで、
自分の行動が行き過ぎているかどうかがわかります。

ルールとは、自分を縛るものではなく、
自分のことを守ってくれる養育係なのです。

また、家族や友人の間で
「大切にするルール」として共有することで、
いわば監視の目がはたらき、ルールを守る方向に
自分をもっていきやすくなります。

決めたルールに従うことが習慣になれば、
認知症予防につながるさまざまな良習慣を
身につけることができるようになります。

————————–
【文献】
Tina D. Hoang, et al.
“Effect of Early Adult Patterns of Physical Activity and Television Viewing
on Midlife Cognitive Function”
JAMA Psychiatry ; 73 : 73-79 (2016)


認知症の家族のこと、どうか忘れないでください


認知症は高齢になればなるほど、発症リスクが高まります。

歳を重ねれば、誰もが認知症にかかる可能性があり、
言い換えますと、身近な病気ともいえます。

厚生労働省による2015年1月の発表によりますと、
日本の65歳以上高齢者の認知症患者数は、
2012年時点で約462万人と推計されています。

これは高齢者の約7人に1人が認知症という数になります。

そして、認知症の高齢者の周囲には、
介護する家族がその分だけいます。

さて、がん患者の場合、その家族は
患者本人と同様に感情や苦しみを抱きがちで、
「第二の患者」とも呼ばれています。

がん患者の家族が、がんをきっかけに受ける
日常生活や人間関係の変化には大きいものがあり、
患者本人と同様にケアやサポートが必要とされています。

この「第二の患者」という考え方は、
認知症の場合にも適用できるかと思います。

認知症本人にも不安がありますが、
内容は違えども、家族にも不安はあります。

ときどき感情的になるのは、
認知症本人もその家族もそうです。

人付き合いを含め日常生活が変わるのも、
できないことが増えていくのも、
認知症本人もその家族も同様です。

ですので、

「家族が認知症になってしまった、
 だから自分は献身的に介護しなければ」

と、一人ですべてを気負う必要はありません。

認知症の家族は、
献身的に介護を努めようとするあまり、
うつになりやすいともいわれています。

認知症の家族も
周囲からの助けが必要な存在なのです。

悩んでもいいですし、迷ってもいいのです。

人に相談してもいいですし、
公的サービスはかしこく利用したら
いいと思うのです。

家族の支えになりたい自分も、
ときには介護を誰かにまかせて、
外に遊びに行きたい自分も両方いてもいいのです。

ときどき、認知症の家族を介護するその果てに
虐待や殺人、無理心中する事件のニュースを耳にしますが、
そのたびに心がとても痛くなります。

すべての事件がそうだと断定できないところはありますが、
これらの事件には総じて共通点がみられます。

多くのケースで、自分の家族だからと、
介護者がすべてを自分一人で抱え込んでしまって、
周囲に相談することなく、解決しようとしてしまう点です。

行政も事業者も、認知症対策に長年にわたり力を入れてきており、
認知症対応に慣れた機関や施設が増えています。

介護のプロに相談することで、認知症の本人も家族も、
余計なストレスを減らすことは十分にできます。

お互いにストレスを減らすことができれば、
ゆとりある介護が実現しやすくなります。

家族の認知症について、まずは地元にある
地域包括支援センターに相談するといいでしょう。

地域包括支援センターは、
全国の市区町村に1カ所以上設置されており、
介護や医療、健康の相談窓口になっています。

また、「認知症の人と家族の会」が
全国各地で家族を介護する人同士が集まる
集いを設けています。

公益社団法人 認知症の人と家族の会
http://www.alzheimer.or.jp/

介護の相談ができますし、
「わたし一人だけじゃない」
「同じ境遇の仲間がいる」
と知ることができるだけでも、
不安やストレスをやわらげることができます。

また、 認知症の身内がいるからと態度を変えずに、
普段と変わらず付き合ってくれる友人の存在も
認知症の家族を介護する人にはありがたかった
・・という声もあります。

家族が認知症になった友人がいた場合、
何か特別なアドバイスをしてあげなくてはと
気負う必要はないのかもしれません。

身近な人がくれる「普通」が
認知症の家族の心を軽くすることもあり、
それならわたしたちがすぐにできることです。


【セミナー報告】認知症予防セミナー:社会参加活動による健康維持と認知症予防


2017年7月15日(土)に、LEC東京リーガルマインド水道橋本校(東京都千代田区)にて、認知症予防セミナー「社会参加活動による健康維持と認知症予防〜高齢者の孤立防止と生きがい創出〜」を開催しました。

セミナーの概要についてはこちらです。

まずは今回のセミナーの開催は、LEC東京リーガルマインド様のご協力をいただき、実現することができました。

ご尽力いただきました関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。

一般社団法人元気人では、大学や研究機関に蓄積されている認知症予防の知見や最新の研究成果を、より早くよりわかりやすいかたちにして、認知症予防の現場で必要とする方々にお届けするべく、毎月セミナーを開催しています。

認知症予防の専門家として、東京都健康長寿医療センター 桜井良太先生をお招きし、「社会参加活動による健康維持と認知症予防〜高齢者の孤立防止と生きがい創出〜」というテーマでお話しいただきました。

桜井先生はお話の中で、

「社会的に孤立し、かつ閉じこもりの場合、死亡リスクが高まる」

「社会参加活動は自然と地域とのネットワークが構築されるので、道義的、社会的、生理的な面からその意義が大きい」

「社会的ネットワークがうまく構築できている地域は、総じて子どもからシニアの世代間交流が活発で、地域住民の健康度も高い傾向にある」

など、「社会参加活動」を切り口に、認知症に強い生活スタイルや地域づくりについて説明されました。

ご参加いただいた方にはアンケートをお願いしましたが、ほとんどの方からご満足の声をいただき、主催者側として大変喜んでおります。

当日ご参加いただいた方からは次のようなお声をいただいております。

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高齢者の現状やそうした方への取り組みについて知ることができたので、よかったです
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定年退職後の社会参加について考えるきっかけになった
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認知症予防活動への参画を模索しておりましたが、お話は要点がわかりやすく、主題もしっかりとしていたと思います
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ボランティア活動の大切さや実際に行われているボランティア活動を知ることができました
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ご参加いただきました皆さまに改めて感謝申し上げます。

一般社団法人元気人は、地域の認知症発症を予防し、誰もが笑顔で元気に暮らせる社会を実現したいと考えています。

そのためには認知症予防に携わる人材育成が不可欠であり、今有益な情報をお届けできるように、今後もこうした勉強会を継続して実施する予定です。

開催中のセミナーについてはこちらからご確認いただけます。


認知症とともに生きるを考えるシリーズその1


認知症の危険因子の一つは加齢です。

このことは統計データが裏付けており、
人は高齢になるにつれ、認知症にかかる割合が増えていきます。

80歳を超えると5人に1人が、85歳を超えると2人に1人が
認知症になるといわれています。
(出典:日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究)

また、認知症と診断されないまでも、
人は年齢とともにもの忘れの度合いは進行するものです。

加齢というコントロール外の要因が危険因子である以上、
いつかは誰もがなる可能性があるのが、認知症という病気です。

生活習慣を見直し、しっかりと予防に努めたことで、
認知症を発症することなく、天寿を全うできれば、それが理想です。

とはいえ、それでもなるのが認知症であり、
本人も家族も大なり小なりの認知症とは折り合って、
ともに生きていく必要があります。

ここからは、とある事例をとおして、
認知症とともに生きることについて考えていきたいと思います。

Aさんは80代の男性です。

国立大学を優秀な成績で卒業した後は、
大手商社の役員まで勤め上げ、気丈でプライドの高い人です。

ですが、あるときから、
もの忘れが目立つようになりました。

Aさん自身は、もの忘れが目立ってきたことを
薄々自覚はしており、衰えを受け入れなければと
考えていたところでした。

しかし、Aさんがしっかりとした人であることを
知っている家族は、もの忘れをしたAさんに、
「どうして忘れたのだ!」と厳しく詰め寄ります。

若い頃のAさんは、優秀で仕事もできたためか、
自分にも家族にも非常に厳しく、少しでも落ち度があると、
感情的に怒鳴っていたようです。

そのような環境で育った家族は
自分にも周囲にも完璧であることを求めすぎて、
「しっかりした父親(Aさん)がもの忘れをした」という事実を
うまく受け入れられなかったのです。

事実を受け入れることを拒否するかたちとして、
家族は小さなもの忘れについても厳しく詰め寄ったのです。

次第にAさんは忘れたことを取り繕うようになり、
指摘されても認めないようになってきました。

Aさんは不安定な感情のまま過ごす時間が多くなり、
そうなるとさらにもの忘れは強くなり、
日常生活のさまざまなシーンで支障が生じるようになりました。

そうなると、家族がまた厳しく詰め寄るため、
Aさんの状態はさらに悪化するという、
負のスパイラルに入り込んでしまったようでした。

Aさんの家族は、Aさんのことを嫌っていたわけではありません。

むしろ、愛しており、ただもの忘れが進行する一方の
Aさんを受け入れられず、どうしても感情的になり、
家族のほうも苦しんでいたのです。

「もの忘れ」のように、
これまでできていたことができなくなり、
何かがどんどん欠落していくのを味わうときに、
本人も家族も感情的になるのはしかたがないところがあります。

それでも、
Aさんとその家族が感情的な葛藤を乗り越え、
もの忘れなどを自然なこととして受け入れ、
叱責ではなく支援の手が差し伸べられていたら
結果は変わっていたかもしれません。

人が認知症になることは問題ではありません。

いつかは誰もがなる可能性があるのが認知症であり、
認知症にかかったら、それで人生が終わるわけでもないからです。

それよりも認知症に対する捉え方のほうが問題で、
認知症に対する捉え方は自分たちが選択することができます。

捉え方が変われば、感情的な対処も変わってきます。

「問題の所在がわかれば、問題の80%は解決したも同然」
ということばがあります。

認知症の捉え方を振り返ったり、人と話し合ったりすることは、
認知症問題の解決に向けた有効なアプローチのひとつではないかと思います。

認知症とともに生きるとは、
認知症という自分の外の現象ではなく、
まずは自分の内面に焦点をあわせることから
スタートするのかもしれません。


日野原重明先生の生き方から学ぶ認知症予防


100歳を超えても現役医師として活躍される日野原重明先生から
認知症予防のヒントを学びたいと思います。

まず日野原先生といえば、
「生活習慣病」の名付け親としてその名が知られています。

認知症予防においては、最近の研究から
「生活習慣病」は脳血管障害だけでなく、
アルツハイマー病の発症にもかかわっていることが
わかってきました。

生活習慣を変えることは、認知症だけでなく、
ガンや心疾患などの病気の発症を抑えることにもつながります。

現代医学をもってしても、
すべての病気が治るわけではありません。

よい生活習慣を実践することは、
医者にかかるよりも健康をもたらしてくれます。

習慣とは日々の繰り返しにほかなりません。

その繰り返しが、
1年後、5年後、十数年後、何十年後の
自分と身近なひとに幸せをもたらし、
また、社会のためにもなります。

認知症予防につながる生活習慣としては、
・運動する
・バランスのよい食事をとる
・頭を使う
・人とつながる
などを取り入れたいところです。

そして、日野原先生は
100歳を超えても有意義に人生を過ごすヒントとして
「新しいことに挑戦を続けて若さを保とう」
と、あるインタビューで答えておられます。

日野原先生が2000年に発足した「新老人の会」では
10,000人以上のシニア世代の会員がいきいきと活動しています。

この会のモットーのひとつは、
「新しいことに常に前向きに挑戦する」ということです。

ここに米国で行われた調査研究があり、
今までに取り組んだことがない新しい内容を学習することは
認知機能の維持に効果的であることがわかりました。

この研究では、
これまでに取り組んだことがない高度な新しい技術として

 ・カメラ操作とパソコンによる画像加工
  もしくは
 ・キルト

を取り上げ、3ヶ月間、週平均15時間以上をかけて
高齢者に学習してもらいました。

他の受動的な活動をしたグループと比較して、
エピソード記憶(個人が体験したことを覚える)が
大幅に向上する効果がみられたのです。

特にカメラ操作とパソコンによる画像加工のグループでは、
その効果が目立っていました。

以上をまとめますと、
日野原重明先生が自ら実践し、提唱されている

・よき生活習慣を身につける

・新しいことにチャレンジし続ける

を日常生活に取り入れることは、
認知症予防につながることになります。

いずれもさほど難しいことではありませんし、
実践し続けたときの効果は日野原先生をとおして
知ることができます。

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【文献】
Park D, C, et al.
“The impact of sustained engagement on cognitive function in older adults:
the synapse project”
Psychological Science, 25: 103-112 (2014)