もし、自分や家族が認知症になったら(通称:もしにん)


認知症は、
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成人になってから、後天的な脳の障害によって
認知機能が持続的に低下し、これまでできていたことが
できなくなり、日常生活や社会生活に支障をきたした状態
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と定義されています。

この定義に従いますと、
認知機能が低下したとしても、
日常生活や社会生活に支障をきたしていなければ、
その人は認知症とはいえないかも知れません。

実際に認知機能が低下したにもかかわらず、
日常生活や社会生活にさほど支障をきたすことなく
元気なときと同じように暮らしている方がいらっしゃいます。

これを実現するには、
将来起こりうるかも知れない
自分や家族の認知症発症に備えて、
事前に準備をしておくことが大切になります。

とはいえ、

「将来に起こりうる認知症の発症に備えてね」

・・といわれても、一度体験して、
自分なりにイメージができなければ、
人はなかなか行動しないものです。

ちょうど、虫歯になったことがない子どもに対して、
「虫歯にならないように、きちんと歯を磨こう」と
さとすようなものです。

虫歯になったことがない子どもにとっては、
虫歯といわれても、どこか他人事のところがあります。

しかし、はじめて虫歯になって、
歯の痛みや治療のわずらわしさを体験して、
いわば、虫歯が自分事になったときに、
きちんと歯を磨くことの大切さを理解します。

虫歯は適切な治療で治りますので、
一度虫歯になってからでも、
虫歯予防の行動を開始しても遅くはありません。

ですが、認知症の場合、一部の原因疾患を除き、
一度発症すると元に戻ることはありません。

認知症になる前にもかかわらず、
認知症発症後のことをイメージして
事前準備を進めておく必要があります。

そして、繰り返しになりますが、
人は一度体験して、そのときの状況をイメージできなければ、
なかなか行動しないものです。

先日都内で、働く30代〜40代の女性を対象に
認知症になった自分を模擬体験できるイベントが開催されました。

自分が認知症になったら 将来の備え考える(NHK WEB NEWS)

模擬体験に参加したことで、
認知症を「自分事」として考えるきっかけとなり、

将来に備えての必要な準備が見えてきたようです。
 
 
また、認知症を発症した高齢者が感じている気持ちも
想像することができました。

認知症予防ではコミュニケーションが大切ですが、
そのコミュニケーションは、相手の立場に立って考える
ところからスタートします。

今後はこうした高齢者や認知症発症者の感覚を
模擬体験できるイベントが増えていくことでしょう。

また、バーチャルリアリティ(VR)技術の革新も
その流れを後押ししています。

こうした模擬体験やVRを通して、
文字通り相手の立場に立って考える機会が増えれば、
コミュニケーションが円滑になっていくことでしょう。

コミュニケーションが円滑になれば、

多くの人の認知症予防が達成でき、
かつQOL(人生の質)も高まっていくことになります。
 
高齢者や認知症発症者の感覚を模擬体験できる機会があれば、
参加してみて、一度体験してみるといいでしょう。

人の老いと認知症予防


高齢化が進む日本において、
今後ますますと増えていくのが、
高齢者の認知症発症者です。

多くの高齢者や家族において、認知症の発症は
QOL(人生の質)を下げる要因になっています。

認知症は高齢になるほど、発症リスクが高まる病気ですが、
人は歳を取ることを止めることはできません。

そのため、
加齢による発症リスクの上昇を相殺するかのように、
運動や食事、知的活動や社会活動などの認知症予防に
努めることがまず大事になります。

また、QOLの観点からは、
止めることができない自分や家族の「老い」を
どのように受け入れるかも課題となります。

聖書には次のような一節があります。

「若い人の栄えはその力、
老人の美しさはそのしらがである。」

現代ではとかく若さが礼賛される一方で、
老年の美しさが置き去りになっている感があります。

ドイツの文豪ヘルマン・ヘッセもその著作の中で、

「(老年を迎えて)「静観の生活」に到達したことが、
どんなにすばらしく、価値のあることであるかに驚嘆するのである」

・・と、老いを肯定的に捉える文章を書いています。

老いていくことを、人は止められませんが、
老いにどのような意味づけをするのかは、
自分で選択することができます。

老いに対する意味づけが変わるとき、
自分の人生に対する意味づけが変わります。

老いに前向きな意味づけがされるとき、
老いていくプロセスそのものである自分の人生にも
前向きな意味づけがされることになります。

自分の人生に前向きな意味づけがされることは、
QOLの維持や向上には欠かせない要素です。

そして、人は前向きに生きようとするとき、やる気が出てきます。

認知症予防において大事なことは、
何の予防を選ぶかよりも、どのようにやる気のスイッチを押すかです。
(行動につながらなければ、予防効果はゼロだからです)

やる気のスイッチがONになれば、人は自ら行動します。

認知症予防についても、
まずはやる気のスイッチをONにすることが大事になります。

ですが、その前提として、本人の中で
人生に対する前向きな意味づけがなされていることが必要です。

極端な話ですが、
自分の人生に意味を見い出せず、「もう死にたい」と言っている人に、
どんな効果的な認知症予防を伝えても、耳に届くことはないでしょう。

老いについてどのような意味づけをしていくかも
認知症予防を行う上では、大事な要素ではないかと思います。

意味づけを変えるきっかけとして、
今回取り上げた聖書やヘッセの著書を読むのもいいでしょうし、
前向きに活動している方に会って、話を聞くのもいいでしょう。

ちなみに、読書も人とのコミュニケーションも
その活動自体が認知症予防につながっています。


3/12施行の改正道路交通法について医師からの声


75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際は、
認知機能検査が義務づけられています。

3/12施行の改正道路交通法により、
認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定されると、
医師による認知症の診断が必要となります。

その認知症の診断で、認知症とされると、
免許の更新ができなくなります。

法改正の前に、日経メディカル社が
認知症の患者を診療している医師2856人に
アンケートを実施しました。

認知症患者の免許、医師の6割「確認してない」
医師2856人に聞く「認知症と運転免許」(日経メディカル)

改正道路交通法の内容を知っているかの質問には、
32.5%の医師が「知らない」と回答。

医師への認知もまだまだこれからのようです。

また、運転免許更新に関わる
認知症の診断書を求められた場合の対応について、

・(初診でも)診断書を発行する 23.0%
・初診ならば他の施設を紹介  22.0%
・(初診・再診にかかわらず)他の施設を紹介 31.2%
・現時点ではわからない 23.9%

という結果でした。

特に地方で暮らす高齢者の中には、
認知症診断の結果によっては、
免許の更新ができない=生活が成り立たない人が

出てくることになります。

かといって、認知症がかなり疑われるのに、
認知症ではないと診断して、その後に事故が起こったとき、
診断した医師に責任が問われることも考えられます。

今回の改正道路交通法では、
認知症診断が免許更新の可否を握っており、
それを担当する医師の責任は重大となっています。

アンケートからは、

求められている社会的責任を果たそうとする姿勢と
その責任をどこまで負いきれるのかという重責の間で
悩む現場の切実な声が聞こえてきます。

法が整ったとしても、制度を動かすのは人です。

認知症問題をクリアーしていくには、
認知症発症者とその家族の声と合わせて

制度を担っている人たち(今回は医師)の声にも
耳を傾けていく必要があるのだろうと思います。

笑いと認知症予防の好都合な真実


一般社団法人元気人宛にある方から下記のご質問をいただきました。

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もしかして、笑いが多い人の方が認知症にかかりにくいのでしょうか?
笑いがコミュニケーションを活発にする効果はありそうなので。(^^)
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とてもいいご質問ではないかと思い、
一緒に考えていきたいと思います。

実際にお笑いの認知症予防効果を調べた研究があります。

「認知症予防を目的とした笑いの効果についての実践的研究」
代表研究者:大平 哲也(大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 准教授)

お笑いといえば、大阪が思い浮かびますが、
やはり大阪大学の先生が調べられたようです。

この研究によると、
ほぼ毎日笑う人と笑う頻度が少ない人とを比較したところ、
後者は前者に比較して、認知機能の低下リスクが
2.1 ~2.6 倍高いことがわかりました。

また、2週間に一度、落語を聞いたり
笑いヨガや笑いを取り入れた健康体操を皆で行ったグループでは、
参加者のQOL(人生の質)を表す得点が
全体的によくなる効果もみられました。

以下の理由からも
よく笑う人は認知症にかかりにくいと思われます。

・笑う人には人が集まって、自ずとコミュニケーションが増える
・笑いは認知症の危険因子であるうつの防止につながる
・笑うとき腹式呼吸になるので、身体の血流量が増える

笑うことは認知症予防の観点からも
QOLの観点からも積極的に行いたいところです。

また、上記の研究では、
外に出かけて皆と一緒に笑うようなプログラムで
あったことが印象的です。

自宅でお笑い番組を観ることもいいのですが、
外に出かけて、仲間と一緒に笑える機会を作ると
さらにいいでしょう。


絵本の読み聞かせによって、認知機能は改善する


一般的に読書は知的活動に分類され、
実際に習慣的に本を読む人は、
認知症の発症リスクが下がることがわかっています。

また、認知症予防においては
コミュニケーションは欠かすことができない活動です。

基本的に読書は一人で行うものですが、
読書にコミュニケーションを加えたら
どのような効果があるのでしょうか?

読書×コミュニケーションの組み合わせで思いつくものといえば、
「本の読み聞かせ」がそれにあたります。

東京都健康長寿医療センターでは、認知症予防として
高齢者に「絵本の読み聞かせプログラム」を推進しています。

このプログラムでは、
絵本の読み聞かせの技術を学ぶ講座を通して、
認知機能を鍛えることと仲間づくりを目指しています。

学習後は、ボランティアとして、
地域の図書館、幼稚園や保育園、学校などで
絵本の読み聞かせを行います。

絵本の読み聞かせは、
聞き手(子どもたち)の反応を見ながら、
話し方に抑揚をつけたり、ときには質問したりと、
興味をもって聞いてもらうためにさまざまな工夫が必要となります。

そのため、通常の読書よりも
さらにたくさんの脳の機能を使っていることになります。

同センターの研究結果によると、
絵本の読み聞かせ活動に参加した高齢者は、
そうではない人に比べて、記憶力テストの点数が
上がることがわかりました。

また、多世代交流の重要性が指摘されていますが、
絵本の読み聞かせでは、高齢者と子どもとの交流も自然に生まれます。

「人は人生で3回、絵本に出会う」といいます。

幼少の頃、親に読んでもらうとき、
親になって、子育てのときに読むとき、
高齢になって、人生を振り返るとき
・・の3回です。

この3回目の絵本と出会うときに、
子どもたちの笑顔と一緒であれば、
とても素晴らしいことだと思うのです。

絵本の読み聞かせは、
高齢になってからも続けられる
趣味・ボランティア活動のひとつです。

認知症予防で大切なのは長く続けることです。

絵本の読み聞かせは多くの人が簡単にはじめることができますが、
極めようとすると奥深さがあり、飽きが来ず、活動が続きやすいメリットがあります。

もし、認知症予防として何をしたらいいのかと
悩んでいる人がいれば、絵本の読み聞かせボランティアに
チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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【文献】
Suzuki H, Kuraoka M, Yasunaga M, et al.(2014)
Cognitive intervention through a training program for picture book reading in community-dwelling older adults: a randomized controlled trial. BMC geriatrics, 14:1-9.


3/12施行の改正道路交通法により、認知症で免許更新が不可に


75歳以上の高齢ドライバーの免許更新が
大きく変わる改正道路交通法が3月12日に施行されます。

参考:認知症で免許更新不可、来月から(ヨミドクター)

75歳以上の高齢者は、
免許更新時に認知機能検査が義務づけられています。

改正道路交通法が施行される3月12日から、
認知機能検査の結果、「認知症のおそれ」と判定された場合、
医師の診断が必要となります。

受診した結果、認知症と診断されると、免許更新は不可能になります。

認知症は高齢になるほど発症リスクが高くなり、
高齢者の誰もがかかる可能性がある病気です。

まずは認知症予防の活動に取り組んで、
運転免許の更新条件を満たすためだけでなく、
自分と家族の人生の質(QOL)の観点からも、
認知機能の低下を少しでも遅らせることが大事になります。

車がなければ生活ができないという人ほど、
ときには車から降りて運動するぐらい
積極的に取り組むことが必要になってきます。

また、認知機能検査で
「問題なし」「認知機能が低下」と判定されている段階で
車に頼らない生活に向けて、準備を進めておくことも大事になります。

このときにも
自分と向き合って考えたり、家族や支援者と話し合ったりなど、
コミュニケーションが大切になります。 

認知症を発症してからでは、
新しい生活に切り替えることはなかなか大変です。

元気なうちであれば、
車に頼らない生活に切り替えられる柔軟性があります。

例えば、車を手放したときに困ることのひとつは買い物ですが、
高齢者がタブレットなどのICT機器を利活用できるようになると、
その一助になります。

しかも、高齢者にとって、
ICT利活用を覚えることは新しいことに取り組むことになり、
それは知的活動として認知症予防につながります。

改正道路交通法の施行は、国の決定事項ですから
自分のコントロール外の出来事であります。

もし、家族が認知症と診断されれれば、
強制的にその家族の免許は取り消しになります。

「車がないと生活ができない」
と文句をいっても仕方がありません。

そして、あわてて生活を変えようとしても、
取り得る選択肢は限られてきます。

認知症予防と将来への事前準備は
自分でコントロールすることができます。

早い段階から取り組まれるのをおすすめしますし、
家族や周囲の人と近々話す機会があれば、
一度話題に取り上げてみてはいかがでしょうか?


認知症予防で最も必要なこと


「認知症予防で最も必要なこと」について
考えたいと思います。

認知症予防は、健康を手に入れて、
よりよく生きるために実践するものです。

その認知症予防を行うときに
最も必要なこととは、何でしょうか?

「頭の良さ」でしょうか?

「たくさんの知識」でしょうか?

「お金」でしょうか?

「仲間」でしょうか?

いずれもあったらいいものですが、
「これがなければ、認知症予防が成立しない」
というものではありません。

答えは…「コミュニケーション」になります。

なーんだと、思われた方もいらっしゃるかも知れません。

私たち人間は、
他人との関係、自分自身との関係、
あるいは宗教的には神との関係など、
関係の中で生きるように造られています。

そして、この関係は、
コミュニケーションなくして
築くことはできません。

私たちの人生を振り返ってみますと、
人生の節目において、コミュニケーションが
うまくいった、いかなかったを左右していたことに気づきます。

自分の思いをうまく伝えられたか、伝えようとしたか。
相手のことを理解したか、理解しようとしたか。

こうしたコミュニケーションが、人生の質を左右しているのです。

人生をよりよく生きるために行う認知症予防においても、
コミュニケーションは大切な要素になります。

ひょっとすると、認知症予防においては
コミュニケーションがなくなった途端、
目的もなく行われる消耗活動に陥ってしまうのかも知れません。

コミュニケーションには、
語彙力やわかりやすい伝え方などのスキルも含まれますが、
コミュニケーションは生き方そのものといえます。

認知症予防におけるコミュニケーションとは、

自分は人生をどのように生きたいと思っているのか、
何を得れば満足するのか、自分が今どんな状態なのか、
自分がどのようになれば家族は喜ぶのか、

・・を理解することです。

逆に、自分は何を失うと嫌なのか、
自分がどうなれば家族は悲しむのか、
を理解することです。

自分自身や他者とのコミュニケーションから、
何のために認知症予防をするのかが見えてきます。

人は「何を」したらいいのかがわかっても
行動につながらないものです。

「何のために」が明確になったとき、
使命に向かって前進していく勇者のように、
人は行動を起こし、その行動にも熱がはいります。

認知症予防においては、まずは

他者と自分とのコミュニケーションはとれているだろうか?
どのようなコミュニケーションをとっているだろうか?

と、コミュニケーションに注目してみるといいでしょう。


田川信用金庫様主催の認知症予防講演 大盛況のうちに終了


2017年2月7日(火)に、田川信用金庫本店(福岡県田川市)にて、田川信用金庫様主催の認知症予防講演を実施しました。

東京都健康長寿医療センターの鈴木宏幸先生が講師として登壇され、「今日からはじめる認知症予防」という題目で90分にわたり、エビデンス(科学的根拠)に基づいた認知症予防についてお話いただきました。

約60名の田川市民の方々がご参加され、講演の最後では「田川市を認知症ゼロの街にしよう」という決意表明が出されるほど、大盛況な講演となりました。

鈴木先生は講演会の中で、「認知症になってからの対処よりも、なる前の対処の方が大切で簡単」「生活習慣の意識を高めれば、認知症発症はかなり減らすことができる」「高齢になればなるほど、社会とのかかわりが大切で、人との楽しい交流は積極的に続ける」など、認知症予防の重要性とその具体的な方法をお話されました。

今回の認知症予防講演をきっかけに、田川市での認知症予防活動が活発化し、認知症ゼロの街田川市が実現することを期待しています。

当法人がまず目指しているのが、認知症に対してどのようにしていけばいいの?と不安を抱えている方々に、正しい認知症とその予防の知識を提供することで、まずは安心していただくことです。

認知症を100%避けることは、現代の医学では不可能で、全員が認知症を発症するリスクがあります。

ですが、認知症の発症を遅延させることは十分に可能です。

もし、高齢者の認知症発症を5年遅らせることができれば、認知症発症者は当初の予想よりも半減(約350万人減)するという試算もあります。

認知症に対する不安を解消し、人生の質を高めるために、認知症の正しい理解と予防方法を、当法人は広げていきたいと願っています。

今回の機会を与えてくださった、田川信用金庫の関係者の皆さまに感謝申し上げます。

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一般社団法人元気人では、認知症予防講演会における講師の出張派遣を行っております。

認知症予防研究の専門家や講演歴豊富な認知症予防活動支援士などが、「物忘れと認知症との違いは?」「認知症予防のメカニズム」「認知症になっても、人生の質をさらに上げるには?」などを、最新の研究事例を踏まえながら、わかりやすくお伝えします。

認知症予防の講演会を実施するにあたり、講師をお探しの方は、認知症予防 出張講演のページまでどうぞ。