歴史の中の認知症


日本の文学史に名前を残す『源氏物語』。

その源氏物語には認知症のことに触れているくだりがあります。

「老いしらへる」「年の数つもりほけたりける人」

年老いてぼけてしまったという意味で、『今昔物語』にも認知症に触れているくだりがあります。

認知症発症の経緯には、さまざまな環境要因がかかわっているため、何が原因と特定することは難しいのですが、平安時代の人々は、老いが認知症の原因ととらえていたことがわかります。

「老いれば人はボケていく」

昔の人はそのように老いをとらえていただけではなく、老いに対して別の視点ももっていました。

古典の中にたびたび登場してきますが、老いて経験を積み重ねた人を「翁」「媼」と称して、畏敬の対象として捉えていたことがわかります。

またアイヌ民族は、認知症の人は「神様の友達」になったという言い伝えを信じていたようです。

認知症を発症した人が困った行動をとったとしても、それは仕方がないものとしていました。

そうやって地域で認知症の人を受け入れてきたのです。

人々は老いに関して長い年月をかけて知恵を蓄えてきました。

古典や昔の人の生き方には、超高齢社会を迎えた日本がどのように過ごせばいいのか、いろいろとヒントが隠されていそうです。


認知症予防につながる社会参加


愛知県星城大学を含む研究グループは、愛知県武豊町で実施した介護予防のプロジェクトで得られたデータを分析し、「認知機能の改善には、社会参加が活発になることが必要」と調査研究をまとめました。

別の研究によると、社会的孤立は、認知症発症の高リスク要因という報告もあります。

何かしらのコミュニティに所属していることは、2025年には5人に1人が認知症という時代を迎えるにあたり、二重の意味で大事になってきます。

一つ目は認知症予防につながる活動そのものでありますし、二つ目は高齢になっても(軽度の)認知症を発症しても、住みたいところで暮らせるセーフティネット作りにつながります。

コミュニティには、地域の老人会をはじめ、就労、ボランティア、習い事、宗教など、さまざまな集まりがあります。

ほとんどのコミュニティが参加をオープンにしていますので、ちょっとでも関心があれば、まずはのぞいてみるのはいいのではと思います。

そうそう、職場と家の往復しかしない働きざかりの男性は特に注意が必要です。

長年、他のコミュニティーに所属することをしてこなかったため、定年退職後、新しいコミュニティに交じろうとしても馴染めない人が多いみたいです。

参加したとしても、単に座っているだけとか。

小職もその傾向がありますから、気持ちは充分にわかります。

ですので、身体も気持ちも前向きに動ける若いうちから、時間を割いてでも、趣味やボランティア活動など、人とかかわる活動を勤しむことをオススメしたいと思います。


これからの認知症対策は、予防と環境づくりの2本立て


誰もが元気なまま、自分の住みたいところで、自分が暮らしたいように人生を送りたいと思っています。

65歳以上の4人に1人は認知症もしくはその予備群といわれています。

認知症を発症することは、その言葉の定義からして、認知機能の低下により日常生活に何かしらの支障が生じていることになります。

それでも自分らしい人生を送りたいと願うのであれば、認知症に何かしらの対策を講じておくことは、クリアーすべき必須課題と言えます。

認知症対策の観点から考えますと、認知症予防にせっせと努め、認知症になりにくい身体作りをしておくことはまず不可欠です。

それと同時に、自分はいつかは認知症を発症することを考慮した上で、人生設計を考えておくことも大事になってきます。

今さかんに認知症予防がうたわれていて、テレビをつけても、書店に行っても、認知症予防に関する情報が山のように溢れかえっています。

認知症予防の基本的な取り組みは、認知症の危険因子(喫煙、運動不足など)を減らすこと、脳の機能を鍛えること(知的活動など)の両方をバランスよく実現していくことです。

これらを日常生活に適用し、習慣化することで、認知症の予防につなげることができます。

ただ、どんな生活をどこで送ろうが、全員が等しくかかえている認知症発症の原因因子がひとつあります。

それは「加齢」です。

年齢が5歳高まると、認知症高齢者の発症率は約2倍に増えるという統計データが出ています。

95歳以上にもなりますと、男性の約半分、女性の約3/4の方が認知症の有病者といわれています。

歳をとることは誰も避けることはできません。

長生きをすればするほど、認知症の発症率が高まっていくことも避けられません。

しかも宝くじが当たるよりも、発症率は高いときていますので、自分はいつか認知症を発症するものとして、いわば覚悟の上で人生設計を立てておくことは、現実的な判断と言えます。

ただ、認知症の自覚症状が出てから、医者から認知症の診断がおりてから、行動をしようとしたとしても、取り得る選択肢は限られてきます。

そうではなくて、頭も身体もまだまだ健康なうちに、認知症を発症した未来の自分に対する準備を済ませておくことで、将来認知症を発症した後でも、取り得る選択肢の幅は充分に広がります。

たとえば、一人暮らしの方が軽度の認知症を発症したとしても、地域の支えがあれば、充分に自宅で一人暮らしを続ける
ことは可能です。

そのためには、自分も家族も認知症を正しく理解している必要がありますし、日頃からの地域との顔が見えるネットワークも必要になってきます。

こうしたことを、まだまだ元気なうちに講じておくのです。

こうした認知症対策の考え方は、保険の考え方と似ています。

家族を養う身であれば、自分にもしものことが起きることは想定した上で、必要な保険に入ります。

もちろん、保険を利用するシーン(大病や怪我、死亡など)が起きないことが一番ですので、普段から健康に気を配り、蓄財に努め、ハイリスクな行動は慎むなどの努力は当たり前のことです。

それでも、もしもの時に自分と家族を守るために、もしもが起こらないうちに、もしものために入っておくのが保険であります。
(もしもが起きた後で、ちょっと保険に入りたいと言っても、保険会社のほうで入れてくれません)

認知症も発症リスクをさげるように日々の生活習慣を見直すと同時に、もしも認知症を発症したとしても、自分らしく生きられるように環境を整えておく、この予防と環境づくりの2本立てが必要です。

予防も環境づくりも大事なことですが、緊急な案件ではないため、先送りにする方は多いように思います。

一度時間をとって、どんな風に将来を過ごしたいと望んでいるのか?

そのために自分は今何をしているのだろうかを考えてみてはいかがでしょうか?


認知症対策の国家戦略が決定したけれども、それはお上任せでいいのか?


政府は認知症対策の関係閣僚会合を開き、2025年度までの具体的な対策を盛り込んだ新たな戦略「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を決定しました。

新オレンジプランの基本的な方針には、以下の3つの重点的なポイントがあり、

◎認知症の人の意思が尊重されること
◎住み慣れた地域のよい環境で暮らすこと
◎自分らしく暮らし続けること

日本は今後、これらを実現する社会を目指していくことになります。

新オレンジプランの基本方針が意味するところは、認知症対策は、お上にまかせておけば、あとはお上が何とかするということではなく、日本に暮らす人全員は、この理想とも言える社会を実現していく当事者意識を持つべきだということです。

「身内には誰一人認知症の患者がおらず、皆達者に暮らしています」
「自分は若いから認知症はもっと先の話だし、そもそも認知症にはなるつもりもない」

だから、今もこの先も認知症介護のお世話になるつもりはないし、今はビジネスで忙しいのだから、そうした地域作りからは自分は外して欲しい・・という声が聞こえてきそうです。

残念ながら!?、老若男女の全員「認知症になっても幸せに暮らせる社会」の担い手であることが求められていると思います。

厚生労働省の推計によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。

そのような未来が予測されている中、今は認知症に無関係だったとしても、認知症発症者を身内に抱える家族の姿は、そう遠くない自分や自分の家族の未来の姿であるし、認知症を発症しとまどっている人の姿は、いつかは経験するであろう自分の姿でもあります。

しかも行政が何とかしてくれる時代はもう終わりを迎えつつあり、戦後すぐの行政がそうであったみたいに、行政には市民の面倒を見る余力はもう残されていません。

老若男女だれしもが、(今は無関係でも)認知症対策はすべて自分事で、人任せにしないことが大事です。

一人ひとりが目の前の空き缶を拾うような、今自分がおかれたところで、今の自分ができるところからスタートすることで、新オレンジプランが想定する理想の社会は実現するのではと思うのです。


適度なカフェイン摂取で認知症予防


認知症予防は2方面からのアプローチ

 ◎「脳を健康に保つ」、いわばディフェンスを固めるアプローチ
 ◎「脳を活性化していく」、いわばオフェンスを仕掛けていくアプローチ

を心がけることが大事になってきます。

サッカーでも攻守のバランスを欠けると、試合に負けてしまうように、認知症予防でもいずれに偏るのではなく、両方をしっかりと見据えて取り組んでいくことです。

「脳を健康に保つ」上で欠かせないのは、脳を含めた身体をかたち作っている食べるものに気を配ることです。

日常生活に取り入れやすい認知症予防につながる食習慣として、適度のカフェインの摂取が勧められています。

カフェインの飲み過ぎによる悪影響がない世界標準の摂取量は「1日400mgまで」です。

レギュラーコーヒー(1杯150ml)に換算すると4杯程度です。

緑茶のカフェイン含有量は、コーヒーの1/4〜1/3ですので、カフェインの悪影響が気になる方は、緑茶を飲まれるといいでしょう。

ちなみに、健康ドリンクにもカフェインが含まれていますので、コーヒーをよく飲み、健康ドリンクも習慣的に飲む方は、カフェインの過剰摂取の可能性がありますので、注意が必要です。

そして、コーヒーやお茶を飲むときは、家族や身近な方とのコミュニケーションを楽しむことで、認知症予防は更に効果的になってきます。

今日もよきお茶タイムをお過ごしください。