認知症予防に向け「全国認知症予防ネットワーク」発足


2017年9月4日 (月)に、
東京・永田町の衆議院第一議員会館において、
「全国認知症予防ネットワーク設立総会」が開催されました。

総会内では、同日に発足した「全国認知症予防ネットワーク」の
設立趣旨や事業内容、参加団体・企業などが発表されました。

呼びかけ人は、衆議院議員の鈴木隼人氏で、
ボランティア団体「認知症予防の会」が事務局を務めます。

同会が目指すところは、認知症になる人を一人でも減らすこと、
また認知症の人の進行を少しでも遅らせることです。

認知症予防に取り組む16団体と2企業が参加し、
協力関係を築きながら、認知症予防の発展・普及のために
活動していきます。

今後の活動内容として、
認知症予防の質の向上のために勉強会や団体間交流が行われる他、
認知症予防を普及啓発するシンポジウムの開催などを行うとしています。

また、設立総会に続いて、「認知症予防サミット」も開催されました。

厚生労働省と経済産業省の担当者による基調講演の後には、
認知症予防をテーマにパネルディスカッションも行われました。

パネルディスカッションのモデレーターは、
認知症予防の会代表である衆議院議員の鈴木隼人氏。

パネリストとして

日本イーライリリー株式会社
研究開発本部担当 副社長 藤本利夫氏

東京都健康長寿医療センター
社会参加と地域保健研究チーム 鈴木宏幸先生

元気!ながさきの会
代表 伊藤登氏

の三人がそれぞれの専門や経験から話をされました。

その中では下記の内容が印象に残っています。

「認知症は症状であって、その症状をもたらしている原因がある。
 認知症は本人の意思や性格に起因するものではなく、
 また外見上は変わりがなくても、脳の病気によるものである。
 周囲はこのことを理解して、ふさわしい対応が大切になってくる」

「アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβがたまったとしても、
 取り組み次第で、認知症の発症を遅延させた事例がある」

「認知症の正しい理解が全国的に普及するには、
 政府やメディアの情報発信もさることながら、
 正しい理解をもった人たちが身近な人に伝えていく、
 そして、その輪が広がっていくが不可欠である」

認知症予防に携わる人材育成を事業とする
当法人においても、目的とするところは同じです。

一般社団法人元気人も
全国認知症予防ネットワークの設立趣旨に賛同し、
同会の参加団体・企業のひとつとして名を連ねております。

同会に参加される皆さまと協力しながら、
認知症ゼロ社会の実現に向けて取り組んでまいります。


認知症予防に関するおすすめの書籍


4人に1人が65歳以上の高齢者がしめる日本では、
高齢者をめぐるさまざまな問題が生じています。

その問題の一つは、認知症の増加と介護の問題です。

ですが、この問題の深刻さに反比例しているのが、
当事者の認知症や介護に関する知識や理解と思います。

「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」という
孫子の兵法でとても有名な言葉がありますが、
認知症や介護についてもあてはまります。

認知症や介護の問題について適切に対応するには、
これらについての正しい知識や理解が不可欠です。

それを手助けしてくれる書籍をご紹介したいと思います。

トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ
『スーパー図解 認知症・アルツハイマー病』。

認知症という病気のメカニズムから、
予防、早期発見のサイン、治療法、
安心して暮らすための介護のコツまで
網羅的に取り扱っています。

そして、書籍の構成が、
カラーの図解と平易な文章からなっており、
認知症のことがわかりやすくまとめられています。

そのため、文字を読むのがちょっと苦手という方は、
パラパラと図解ページから読むとよいでしょう。

また、本書からは認知症予防を考えるうえで、
2つの大事な視点(思考パターン)を得ることができます。

ひとつめは「認知症は先手必勝であること」。

武道でもビジネスでも、必敗のパターンがあり、
それは「後手に回る」ことです。

認知症においても例外ではありません。

認知症において対応が後手に回りますと、
こちらのペースで動ける範囲が狭くなるため、
質と量において、選択肢が限られてしまいます。

そして、対応が後手に回る大きな理由は
情報不足と(偏見からの)間違った判断によります。

本書は、東京都健康長寿医療センターの医師が
執筆と監修に携わっています。

本書をとおして、エビデンス(科学的根拠)に基づいた
認知症の知識と理解を得ることができます。

そして、ふたつめの視点は、
「認知症は誰でもなる可能性があること」。

つまり、自分や家族の認知症発症を
あらかじめ想定しておくということです。

加齢が認知症の大きな危険因子である以上、
長生きをすれば、誰もが認知症にかかる可能性があります。

年齢別の認知症の割合を調べた統計データによると、
85歳〜89歳で約40%、90歳〜94歳で約60%、
95歳以上で80%とあります。

その意味では、どれだけ認知症予防に努めたとしても、
認知症にかかる可能性はあり、認知症発症を想定しておくことも
大事になってきます。

自分も家族もいつかは認知症を発症するかもと
想定しておけば、将来の介護に備えて、
早い段階から準備を行うことができます。

本書には、認知症のサインやその治療、
介護が必要になったときの対処法が
わかりやすくまとめられています。

認知症の人の言動や行動を知っていれば、
無用な混乱や困難が避けやすくなります。

親の認知症が心配な家族の方も、
また自身のもの忘れが気になる方も、
本書を手元に置いておかれるのをおすすめします。

家族間に認知症に関する共通の知識や理解があることで、
予防や治療、介護はよりスムーズなものになっていきます。

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◆目次◆

第1章 認知症は先手必勝―シグナルチェックと予防法
第2章 正しく理解しよう、認知症
第3章 認知症の最新治療
第4章 認知症の家族とともに生きる

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3/12施行の改正道路交通法について医師からの声


75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際は、
認知機能検査が義務づけられています。

3/12施行の改正道路交通法により、
認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定されると、
医師による認知症の診断が必要となります。

その認知症の診断で、認知症とされると、
免許の更新ができなくなります。

法改正の前に、日経メディカル社が
認知症の患者を診療している医師2856人に
アンケートを実施しました。

認知症患者の免許、医師の6割「確認してない」
医師2856人に聞く「認知症と運転免許」(日経メディカル)

改正道路交通法の内容を知っているかの質問には、
32.5%の医師が「知らない」と回答。

医師への認知もまだまだこれからのようです。

また、運転免許更新に関わる
認知症の診断書を求められた場合の対応について、

・(初診でも)診断書を発行する 23.0%
・初診ならば他の施設を紹介  22.0%
・(初診・再診にかかわらず)他の施設を紹介 31.2%
・現時点ではわからない 23.9%

という結果でした。

特に地方で暮らす高齢者の中には、
認知症診断の結果によっては、
免許の更新ができない=生活が成り立たない人が

出てくることになります。

かといって、認知症がかなり疑われるのに、
認知症ではないと診断して、その後に事故が起こったとき、
診断した医師に責任が問われることも考えられます。

今回の改正道路交通法では、
認知症診断が免許更新の可否を握っており、
それを担当する医師の責任は重大となっています。

アンケートからは、

求められている社会的責任を果たそうとする姿勢と
その責任をどこまで負いきれるのかという重責の間で
悩む現場の切実な声が聞こえてきます。

法が整ったとしても、制度を動かすのは人です。

認知症問題をクリアーしていくには、
認知症発症者とその家族の声と合わせて

制度を担っている人たち(今回は医師)の声にも
耳を傾けていく必要があるのだろうと思います。

3/12施行の改正道路交通法により、認知症で免許更新が不可に


75歳以上の高齢ドライバーの免許更新が
大きく変わる改正道路交通法が3月12日に施行されます。

参考:認知症で免許更新不可、来月から(ヨミドクター)

75歳以上の高齢者は、
免許更新時に認知機能検査が義務づけられています。

改正道路交通法が施行される3月12日から、
認知機能検査の結果、「認知症のおそれ」と判定された場合、
医師の診断が必要となります。

受診した結果、認知症と診断されると、免許更新は不可能になります。

認知症は高齢になるほど発症リスクが高くなり、
高齢者の誰もがかかる可能性がある病気です。

まずは認知症予防の活動に取り組んで、
運転免許の更新条件を満たすためだけでなく、
自分と家族の人生の質(QOL)の観点からも、
認知機能の低下を少しでも遅らせることが大事になります。

車がなければ生活ができないという人ほど、
ときには車から降りて運動するぐらい
積極的に取り組むことが必要になってきます。

また、認知機能検査で
「問題なし」「認知機能が低下」と判定されている段階で
車に頼らない生活に向けて、準備を進めておくことも大事になります。

このときにも
自分と向き合って考えたり、家族や支援者と話し合ったりなど、
コミュニケーションが大切になります。 

認知症を発症してからでは、
新しい生活に切り替えることはなかなか大変です。

元気なうちであれば、
車に頼らない生活に切り替えられる柔軟性があります。

例えば、車を手放したときに困ることのひとつは買い物ですが、
高齢者がタブレットなどのICT機器を利活用できるようになると、
その一助になります。

しかも、高齢者にとって、
ICT利活用を覚えることは新しいことに取り組むことになり、
それは知的活動として認知症予防につながります。

改正道路交通法の施行は、国の決定事項ですから
自分のコントロール外の出来事であります。

もし、家族が認知症と診断されれれば、
強制的にその家族の免許は取り消しになります。

「車がないと生活ができない」
と文句をいっても仕方がありません。

そして、あわてて生活を変えようとしても、
取り得る選択肢は限られてきます。

認知症予防と将来への事前準備は
自分でコントロールすることができます。

早い段階から取り組まれるのをおすすめしますし、
家族や周囲の人と近々話す機会があれば、
一度話題に取り上げてみてはいかがでしょうか?


これからの認知症予防に必要な2つの取り組み方


認知症予防活動は、部品の取り替えがなくなってしまった愛車を長く乗り続けることにたとえることができます。

愛車を長く乗り続けるには、2つの取り組みを実践することが重要になってきます。

・車にこれ以上ダメージがたまらないように丁寧に乗っていく

・それでもガタがきたところとは、それなりに折り合っていく

前者は、車の状態をいかに新車の時と同じように保つかということになります。

これを認知症予防にあてはめるのであれば、

 ◎有酸素運動で脳内の血流量を増やす

 ◎食べ物に気をつける(脳も身体も食べたものでできあがっています)

 ◎睡眠をしっかりとる(脳は寝ている間に脳内の老廃物を排出)

など、脳そのものを生理学的に健康に保つ活動がそれにあたります。

しかし、どれだけ大事に車に乗っていたとしても、かたちあるものは朽ちていく定めである以上、どこかはガタがくるもの。

長年乗ってきた車の場合、ドアの開閉がスムーズではなくなったり、エアコンからは夏でも温かい空気しかでなかったりとガタがきます。

それでも、ドアに微妙な力加減を加えることでスムーズな開閉を実現する技をマスターしたり、夏は窓ガラス全開で走ってみたりと、何とか折り合って愛車に乗り続けます。

認知症予防においても同じで、歳を重ねるごとに脳にガタがくることは誰も避けることができません。

いわゆる老化で、誰もが昔より物覚えが悪くなったり、以前はできたことができなくなったりするものです。

認知症予防においては、老化した脳が上手く働くように、脳の認知機能を鍛えるトレーニングをしてみたり、ICTを活用して衰えた脳の機能(特に記憶力)を補ったりして、生活に支障なく愉快に暮らせるようにします。

多くの方は認知症予防というと、脳の生理的な状態をいかに若く保つかということに注力します(もちろん、これはとても大事です)。

認知症予防の目指すところは、認知症の定義からして、まさに生活に支障をきたさないようにすることでありますから、「ガタがきたところとはそれなりに折り合っていく」スキルも、とても大事になってきます。

長年、高齢者向けのICT教育に携わっている身としては、高齢者がICT利活用を習得することは、(脳がある程度老化しようとも)生活に支障をきたさないように愉快に生きていけるようにサポートしてくれます。

実際のところ、高齢者にとって未知の分野であるICTを習得するプロセスそのものが脳の認知機能を鍛えることにもつながっています。

認知症予防においては、脳を生理的に健康に保つ活動と、老化した脳と折り合いをつけながら生活に支障がでないようにしていく活動の両方を意識することが、大事になってくるだろうと思います。


手術で改善する可能性がある認知症があります


日本では認知症の発症原因の5割をアルツハイマー型がしめており、また現在の医学ではアルツハイマー病の治療法や根治薬がまだ見つかっていません。

そのため認知症の代名詞としてアルツハイマー病を思い浮かべる人も多く、認知症を発症するともう治らないものというイメージが人々の中で定着しています。

実はアルツハイマー型以外にも、脳血管性型、レビー小体型など、認知症にはさまざまな発症原因が確認されています。

症状としてはひとつなのですが、その認知症の症状(認知機能の低下により生活に支障をきたしている)をもたらしている原因は複数あるということです。

認知症の発症原因によっては、数は少ないですが、手術で改善する事例もあります。

 参照:手術で改善する可能性がある認知症「知らない」が9割(あなたの健康百科)

手術で改善できる発症原因であれば、手術を選択することで、認知症が改善する可能性があります。

またアルツハイマー型認知症であっても、初期段階であればあるほど、認知症を進行させないための選択肢もたくさん残されています。

認知症の疑いがあるときは、受診を先延ばしにすることなく、今日にでも病院に相談することが大事になってきます。


約43万人もの介護難民に備えて


団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる10年後の2025年には、全国で約43万人が必要な介護を受けられず、そのうちの3割である約13万人が東京圏に集中するという試算が発表されました。

参照:2025年…「介護難民」受け皿どうする?(YOMIURI ONLINE)

東京圏では子どもを保育園に入れたくても入れられない「待機児童」が問題となっています。

同じ東京圏で、今度は介護を必要とする高齢者が介護施設に入れない「待機介護」が社会問題になろうとしています。

待機介護は、

介護を必要とする人 > 介護施設の収容数

という不等式が成り立つから問題となってます。

行政から発表されるコメントを見ますと、「地方誘導に違和感」や「介護職員の不足に不安」という声があがっており、上記の不等式でいうところの「介護施設の収容数」に焦点があたっているように思えます。

介護業界の慢性的な人手不足や国や地方自治体の限られた予算を考えると、「介護施設の収容数」を増やすには限度があります。

そうではなくて、不等式の左側である「介護を必要とする人」に焦点をあてる、つまり、介護を必要とする人をそもそも減らせないかを考えることで、待機介護の問題を解消する手立てが見つかります。

待機児童の場合、待機児童の数そのものを減らす施策をとると、少子化が更に加速することになり、50年後、100年後の日本に禍根を残すことになります。

待機介護の場合は、介護を必要としない人そのものを減らす、つまり健康で自立した人を増やすことこで、待機介護の問題が解消されるばかりか、逆に高齢者の就労や社会活動を通して、社会に大きなプラスをもたらします。

待機介護を解決する糸口として期待されるのは「認知症予防」です。

ことばの響きで認知症予防に抵抗を示す人がまだまだ多いようですが、最新の認知症予防は、脳のことだけでなく、身体全体、心、人的ネットワーク、資産などの人が生きていく上で欠かせない要素をすべてバランスよくしていこうという考え方になってきています。

「認知症予防」という特定の症状を連想させるものから、ライフスタイル全体をよくしていくことをイメージさせるものに、将来的には呼び方が変わるかも知れません。

正直なところ、認知症予防のことを知ってもらおうと、人を集める集客ひとつをとっても、民間でできることには限度があります。

行政には予算があり、大人数が集まる施設があり、広報というメディアももっています。

行政が目の付けどころを変えて、介護を必要としない人を減らす施策、つまり「認知症予防」の啓蒙と普及に焦点をあてていくことで、待機介護の問題もその質が変わってくるだろうと思います。


認知症予防は少なくても5年間取り組めるものを


先月5月29日に厚生労働省研究班が、認知症の人の医療や介護に関し、社会全体が負担している費用を算出しました。

平成26年の1年間で社会負担は約14兆5千億円に上るとの推計で、その内訳は医療費1兆9千億円、介護費6兆4千億円、家族が自ら行う介護などは6兆2千億円。

団塊ジュニアが高齢者となり、高齢人口が更に増える2060年には、約24兆3000億円まで膨れあがる見込みです。

参照元:認知症:社会的負担14.5兆円 医療、介護費用など試算 厚労省(毎日新聞)

これまで無償扱いの家族が行う介護負担が、体験的なことだけでなく、数値としても大きいことが明らかになりました。

また国の医療費・介護費が悲鳴を上げ、介護業界の慢性的な人材不足の現状を考えますと、今後介護する家族への負担は増えることはあっても、減ることはありません。

やはり、自分の人生の質と家族のことを思えば、元気なうちから「認知症予防」に努め、認知症発症のリスクをかぎりなく抑えていくことは、推奨というよりも義務レベルまで、重要度も緊急度も高くなっています。

今40代で高齢の親を抱える団塊ジュニア世代にとっては、親の認知症予防とともに自分のことも考えて、今どのように行動していくかは、日本の未来を大きく左右する選択肢であります。

ある試算によると、アルツハイマー型認知症の発症を5年遅らせることができれば、発症率が半減するとあります。

認知症の発症前に寿命を全うできる人の数が増えると、本人にとっても、その家族にとっても、とても有意義なことになります。

全国民的に認知症予防に取り組み、発症を5年遅らせることができれば、これから2060年にかけての約5兆円の社会負担の削減と年間10万人ともいわれている介護離職者の軽減を達成できることになります。

認知症予防は、生活習慣の改善からパソコン、脳トレ、カラオケ、旅行などのアクティビティ(活動)まで、さまざまなものが提唱されています。

認知症予防は、短期間にたくさん頑張るよりも、小さな活動でも長年続けている方が時間の複利効果が働いて、予防効果は高くなります。

先に述べた数値から考えますと、少なくても5年間は取り組める認知症予防プログラムが望ましいことになります。

たとえば、パソコンや今流行のタブレットですと、日々新しい技術やサービスが生まれていますので、学ぶ内容には事欠くことがありません。

また、認知症予防プログラムの活動を通して身につけたパソコンやインターネットの知識やスキルは、お買い物や情報収集などの日常生活のサポートにいかすことができます。

5年間のお金も時間もエネルギーも費やすのですから、自分に関心があるものは選ぶモノはもちろんのこと、波及効果が見込めるかどうかの視点も考えたいところですね。


認知症予防には良質な睡眠を


米ワシントン大学の研究グループが、「睡眠不足はアルツハイマー型認知症の発症リスクを高める」という研究結果を発表しています。

認知症は、異常なタンパク質「アミロイドβ」が脳内に蓄積することで、引き起こされるといわれています。

睡眠中の脳は、全く休んでいるのではなく、覚醒時とは別の活動を行っています。

睡眠中の脳の活動の1つに、日中にたまった老廃物を排出するという、脳の機能を維持する上で欠かせない活動があります。

睡眠不足が続くと、この排泄作用が低下し、アミロイドβが脳内に蓄積しやすくなると推定されています。

一般的に高齢になるほど、睡眠の質が低下し、睡眠障害を起こす人が多くなりますが、生活習慣を改善することで、睡眠の質をあげることができます。

認知症予防につながる生活習慣の改善として、下記の3つに注目するといいでしょう。

1)日中の活動量を増やす

日中の活動量を増やすこと、そのために有酸素運動を行うことは、二重の意味で認知症予防に効果的です。

有酸素運動を通して、脳の血流量が増えて脳が活性化することに加えて、身体が疲れることで、睡眠時の質を深くするからです。

ちなみに夕方に運動をすると、良質な睡眠をとる上で効果的です。

夕方に運動して体温が上昇することで、夜間にかけて体温がさがっていき、眠りに入りやすくなるからです。

 

2)昼寝

適度に昼寝をする習慣は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが5分の1に下がるという研究報告があります。

アルツハイマー型認知症のリスク遺伝子をもつ人でも、昼寝の習慣によって、発症リスクが軽減することが指摘されています。

ただし、昼寝の時間は30分以内がよく、それ以上になると夜の睡眠の質がさがるなど逆効果になります。

また、昼寝をすることで、午後からの仕事や勉強の効率が高まることはよく知られています。

アミロイドβが蓄積し出す40代、50代から認知症予防はスタートするのが望ましいといわれていますが、これはちょうど働き盛りの年代になります。

経営面からも従業員の(将来的な)健康面からも、企業として積極的に昼寝を推奨したいものです。

 

3)生活習慣病の管理

糖尿病や高血圧があると、睡眠が不十分になりがちですし、逆に睡眠に問題があることで、糖尿病や高血圧の悪化を招きます。

生活習慣病を招く生活習慣は、アルツハイマー型認知症の発症を高める危険要因でもあります。

糖質制限を取り入れるなどして、血糖値や血圧をきちんと管理することが大切です。


認知症予防は40代からスタートするべき2つの理由


認知症予防は高齢になってから取り組むものと考えられていますが、実際は40代から認知症予防をスタートすることが望ましいです。

その理由は2つあげられます。

ひとつ目の理由は、若いときから認知症になりにくい生活習慣(運動や食生活、人とのつながりなど)を続けることで、脳を若く保つことができます。

いわば、認知症発症までの負けしろを増やすことができるのです。

この負けしろが多いほど、健康寿命が延びることであり、歳をとってからも元気に自立した生活を送ることができます。

特に運動習慣は脳を若く保つには大事でして、米国ボストン大学の報告には「40代で運動していた人は、運動していない人と比べて、60代のときの脳は若い」とあります。

(引用ここから)

脳の老化が0.5年ずつ進んでいく
 40代のときのトレッドミル運動負荷試験によると、普段運動していない人では、運動している人よりも運動したときの心拍と血圧への影響が大きかった。

 軽い運動でいわゆる「下の血圧」である拡張期血圧が高まった人は、60代になってからの認識力テストの結果が悪くなっていると分かった。

 40代で運動時の拡張期血圧が7.1mmHg高くなるごとに脳の老化は0.5年進むと分かった。同様に、運動時に心拍が毎秒8.3回早くなるごとに脳の老化は0.5年進んでいた。運動の許容量が低くてもやはり脳の老化につながった。

40代で運動すると60代の脳は若くなる、米国ボストン大学が報告(Medエッジ)

(引用ここまで)

またふたつ目の理由として、長年身につけたきた習慣をやめることはなかなか難しいことです。

新しい習慣を身につけるには、何か古くからの習慣をやめることが必要になります。

年とともに習慣が続くほど、習慣は強化されますし、そのように人格も固まってしまうため、年をとってから習慣を変えようとするのは至難の業であったりします。

何か脳の健康のために運動をしようと思い立ったとしても、身体がいうことを聞いてくれず、時には文字通り痛みを伴います。

この痛みにも打ち勝って前に進み出ようとするには、これまでに身につけてきた前に進もうとしてきた習慣の力がものをいうのですが、これまで習慣を培ってこなかった人には期待できるはずもありません。

良習慣は若いときから身につけておくことが大事なのです。

以上、40代から運動習慣がある人は、脳を若く保つことができ、また長年続けてきた運動習慣がより強固になり、良習慣が続くことから、ますます脳を若く保つことができるのです。

ときどき、高齢者が取り組む認知症予防が話題になりますが、今後は70代と40代の親子で取り組む認知症予防プログラムも求められるだろうと思います。

今いる高齢者の認知症発症を押さえながら、未来の高齢者である中年層の認知症発症リスクもさげなければ、永遠に認知症問題は解決しません。

そういう意味においては、これは知的活動にあたりますが、40代の子どもが使い慣れたパソコンやiPadの楽しく便利な使い方を、70代の親に教えるというのは、実は両者にとっての認知症予防であったりするのです。