認知症市場での注目企業:公文教育研究会


加齢は認知症の危険因子のひとつです。

団塊世代が75歳を迎えて後期高齢者となる2025年には、
日本の高齢者の5人に1人は認知症という推計を
厚生労働省が出しています。

超高齢社会を迎えた日本が、
認知症という重大な社会問題に直面しているのは、
ある意味必然といえます。

認知症のメカニズムには未解明のところがあり、
今のところ根本的に治療することは不可能です。

しかし、日本社会に暗い影を落としている認知症問題に対して、
さまざまな業種の企業が解決に向けて商品やサービスの開発に
心血を注いでいます。

企業にとって認知症市場は現代のフロンティアともいえます。

画期的な商品やサービスが開発できれば、
今後市場を牽引していくリーディングカンパニーとして
成長できるチャンスでもあるからです。

前置きが長くなりましたが、
認知症市場において注目企業を取り上げ、
その取り組みを詳しくみていきたいと思います。

今回取り上げる企業は「公文教育研究会」です。

公文は、認知症の改善・重症化防止を目的にした
非薬物療法の「くもん学習療法」を開発しました。

2004年から介護施設への導入がスタートし、
現在、全国1,600近くの介護施設に導入されています。
(同社ホームページを参照)

「くもん学習療法」では、
計算問題や文章の音読などの教材プリントを使って、
認知症高齢者と介護スタッフがコミュニケーションを
取りながら学習を進めていきます。

試行錯誤を経て、あえて「簡単な」
単語や文章の音読、計算の教材を選んでいるのが特徴です。

思考やコミュニケーション、やる気などの
ヒトをヒトたらしめている脳の機能は、
前頭前野が担っていると考えられています。

この前頭前野は、難しい計算や思考をしているときよりも、
簡単な計算や文章を音読しているときに、前頭前野を含めた
脳全体が活性化するといいます。

こうした知見に基づき、くもん学習療法は設計されています。

認知症の人に、訓練のためであっても、
何か新しいことや難しいことを無理にしてもらうと、
できないこと、失われたものを確認させがちです。

それよりも、今ある脳の機能でできることを、
周囲がコミュニケーションを交えながらサポートするほうが、
認知症の人のためになるということです。

文字にしたらたった三行程度のことですが、
この知見を得るために、研究者や企業は
膨大な時間と資金を費やして研究しています。

こうした苦労の末発見された知見を利用しない手はありません。

ややもすると、認知症の家族に
できなくなったことや難しいことを
させようとしていませんでしょうか?

例えば、足が悪くて車椅子を使っている人に向かって、
「やる気を出して歩きなさい」とは言わないはずです。

それはその人の外見をみて、こちらも認識を改め、
ふさわしい言葉がけや接し方、態度を選択するからです。

ですが、認知症の場合は、脳の中で病変が生じているため、
外見上は元気な頃とあまり変わりがありません。

そのため、その人を見る目が変わらず、ということは
言葉がけも接し方も態度も変わることなく、
認知症の本人に無理をさせてしまっていることが多々あります。

元気ではつらつとしていた頃の姿を知っているだけに
これぐらいはできていて欲しいという思いがあるのかもしれません。

しかし、それがBPSD(行動・心理症状)の
悪化を招いていることもあるのです。

BPSDは、認知症の中核症状に起因するも、
本人の性格や環境によって、いかようにも表れ方が変化します。

BPSDは介護する人にとっては悩みの種ではありますが、
その介護する人がBPSDを管理する上で最も重要な存在となっています。

くもん学習療法では、
認知症の人に寄り添ったアプローチをとりますので、
認知症の緩和ケアや生きがいづくりの一貫として取り入れる
施設が多いのだろうと思います。

くもん学習療法が採用している認知症の人への接し方は
自宅で認知症の家族と接するときにも取り入れたいものです。

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【参照】
KUMON | 学習療法センター <https://www.kumon-lt.co.jp/>
(参照 2017/08/31)