認知症市場での注目企業:NPO法人りぷりんと・ネットワーク


加齢は認知症の危険因子のひとつです。

団塊世代が75歳を迎えて後期高齢者となる2025年には、
日本の高齢者の5人に1人は認知症という推計を
厚生労働省が出しています。

超高齢社会を迎えた日本が、
認知症という重大な社会問題に直面しているのは、
ある意味必然といえます。

認知症のメカニズムには未解明のところがあり、
今のところ根本的に治療することは不可能です。

しかし、日本社会に暗い影を落としている認知症問題に対して、
さまざまな業種の企業が解決に向けて商品やサービスの開発に
心血を注いでいます。

企業にとって認知症市場は現代のフロンティアともいえます。

画期的な商品やサービスが開発できれば、
今後市場を牽引していくリーディングカンパニーとして
成長できるチャンスでもあるからです。

前置きが長くなりましたが、
認知症市場において注目企業を取り上げ、
その取り組みを詳しくみていきたいと思います。

今回取り上げる企業は
「NPO法人りぷりんと・ネットワーク」です。

4人に1人が65歳以上の高齢者が占める日本では、
「支えられる側」から「支える側」の高齢者を
増やそうという取り組みがなされています。

地域で活躍する元気な高齢者を増やすことで、
高齢者本人のQOL(人生の質)を高めると同時に、
少子化による労働不足の解消、社会保障費の負担減、
地域のつながりの構築などを実現していくのが狙いです。

同法人では、高齢者を対象にした
子どもたちへの絵本の読み聞かせボランティアの養成に
取り組んでいます。

絵本の読み聞かせは、
自分の子どもが小さい頃にしていたので、
すぐにでもできると感じる人も多いようです。

しかし、家読みと外読みとでは状況がまったく異なります。

家で自分の子どもに対して絵本を読み聞かせる場合、
親子の関係がある中、1対1で絵本を読み聞かせます。

ボランティアとして施設で絵本を読み聞かせる場合、
はじめて会う子どもたちと信頼関係を築きながら、
1対多で絵本の読み聞かせを行います。

ボランティアを目的にした絵本の読み聞かせでは、
聞き手(子どもたち)の反応を見ながら、
話し方に抑揚をつけたり、ときには質問したりと、
興味をもって聞いてもらうためにさまざまな工夫が必要となります。

そもそも、大勢の子どもたちの興味を引くような、
いわば外読みに適した絵本を選定しておく事前準備も
大切になります。

りぷりんと・ネットワークでは、
高齢者に対して絵本の読み聞かせの技術を
しっかりと学べるプログラムを提供しています。

学習を終えた高齢者は、仲間とグループを組み、
地域の図書館、幼稚園や保育園、学校などで
ボランティアとして絵本の読み聞かせをします。

この絵本の読み聞かせをとおした地域貢献は、
高齢者の認知症予防にもなっています。

認知症予防につながる活動である
「運動」「知的活動」「社会とのつながり」を
しっかりと習慣化することができるのです。

東京都健康長寿医療センターの研究結果によると、
絵本の読み聞かせ活動に参加した高齢者は、
そうではない人に比べて、記憶力テストの点数が上がっていました。

また、絵本の読み聞かせは、
高齢になって身体機能が衰えた後でも続けやすい
活動のひとつです。

実際に要介護の認定を受けた人でも
絵本の読み聞かせの活動をはじめ、
今でも続けておられるケースもあります。

絵本の読み聞かせは、高齢者の認知症予防が期待でき、
また長期継続も可能な活動です。

また、多世代交流の重要性が指摘されていますが、
絵本の読み聞かせでは、高齢者と子どもとの交流も自然に生まれます。

絵本の読み聞かせのような活動が増えることで、
認知症は発症後のケアに重点を置く時代から予防する時代へ、
そして、予防活動をとおして、社会貢献も実現する時代に
入ろうとしているといえます。

りぷりんと・ネットワークはNPO法人ですので、
投資対象として注目できる企業ではありませんが、
今後のさらなる活動の広がりに期待したいところです。

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【参照】
NPO法人りぷりんと・ネットワーク <https://www.nporeprints.com/>
(参照 2017/08/29)

【文献】
Suzuki H, et al.
“Cognitive intervention through a training program for picture book reading
in community-dwelling older adults: a randomized controlled trial”
BMC geriatrics, 14:1-9 (2014)