(認知症予防)知的活動なら何でもいいわけではない


認知症予防といえば、脳を鍛えることにつながる
「知的活動」を思い浮かべる人も多いかと思います。

知的活動が目指すところは、頭を使うことで、
「認知的予備力(認知機能の蓄えのようなもの)」
の向上といえます。

認知的予備力が高い人は、負けしろがあることになり、
日常生活に支障が出るレベルまで症状が進行するのに、
その分時間がかかると考えられています。

そのため、知的活動をすることで、
認知症予防を目指すのは理にかなっているのですが、
知的活動なら何でもいいわけではないようです。

いろいろな知的活動でもどのような内容が
認知機能を向上させる効果が期待できるのか、
米国の研究者らが調べた研究があります。

実験結果をまとめると、2つのグループにおいて
認知機能の向上に差があることがわかったのです。

その2つのグループは以下のとおりにわけられました。

A)音楽鑑賞やDVD鑑賞、パズルなどに取り組むグループ
  (実験参加者にとっては、慣れ親しんだ活動)

B)デジタルカメラの操作技術を教わり、撮影した写真を
  パソコンで編集するスキルを学習したグループ
  (実験参加者にとっては、はじめての活動)

Aグループと比較して、Bグループのほうが
3ヶ月後の記憶能力の向上がみられたのです。

実験で調べたのは、記憶能力についてでしたが、
認知的予備力が向上したと考えてもいいでしょう。

この研究結果を踏まえますと、
慣れたことに取り組むよりも、新しいことを学習するほうが、
認知的予備力の強化につながるといえます。

音楽鑑賞やDVD鑑賞は、知的活動のカテゴリーに入りますが、
確かにそれほど頭に負荷がかかる作業ではありません。

もし、頭に負荷がかかる作業であれば、
リラックスしたいときの活動に選ばれることは
ないはずです。

しかし、新しいことを学ぶことは
大変なことですが、その大変さがいい負荷となって、
頭を鍛えることにつながるのです。

このあたりは筋トレと同じでしょう。

例えば、250mlのペットボトルを何回も上げ下げしても
ほとんどの人は筋肉がつくことはありません。

筋肉をつけたかったら、
回数よりも一定の負荷が必要なように、
認知的予備力の向上にも負荷が必要なのです。

頭にとっての負荷とは、
新しいことにチャレンジすることなのです!

また、目や耳などの感覚器官から入ってきた情報は、
記憶を司る海馬を介して、脳で処理されます。

五感を刺激することは、
海馬を刺激することにもつながります。

また、感情を司る扁桃体は海馬の近くにあり、
楽しいや嬉しいなどの好感情をいだくことも
海馬を刺激し、認知的予備力を高めると思われます。

以上をまとめますと、

知的活動での認知症予防では、
新しいことにチャレンジすること、
しかも強いられてではなく、好奇心の赴くままに、
五感を刺激しながら取り組むことが大切になります。

その意味ではいくつになっても、
好奇心旺盛な人でありたいものです。

————————–
【文献】
Denise C. Park, et al.
“The Impact of Sustained Engagement on Cognitive Function in Older Adults: The Synapse Project”
Psychological Science 25, 103–112, (2014)


認知症予防に取り組む前に知っておきたいこと


「がんになっても、認知症だけにはなりたくない」

あるご高齢の方がご自身の思いをことばに表しました。

これはその方だけが持っている思いではなく、
多くの方が持ち合わせている思いではないかと思います。

こうした国民的な意識を反映してか、あちらこちらで

「○○を食べて認知症予防」
「▲▲して認知症を克服した」

など、認知症予防をテーマにした番組や雑誌をみかけます。

このように認知症予防が強調される背景には、
予防の対象となる「認知症」は悪いものという
価値観があると思います。

確かに認知症で社会生活が制限されることもありますし、
認知症介護の大変さもよく耳にします。

さらに予防の大切さがたくさん語られているため、
多くの人がこの価値観を強化しているように感じます。

こうした状況であれば、
「認知症にはなりたくない」「認知症は悪いもの」
と考えるのは、ある意味自然の流れです。

しかし、この考えに基づきますと、
認知症を予防できた人は成功者で、
認知症になった人は失敗者ということになります。

ですが、実際のところはそうともいえないのです。

というのも、認知症は長寿とも関係しており、
歳をとればとるほど、ほとんどの人は認知症を発症します。

100歳を迎えても、認知症にならずに矍鑠(かくしゃく)
としている人は、一握りの人だけです。

先ほどまでの価値観に基づくと、
認知症にならず天寿を全うできた幸せな人は
ほんの一部の人だけになってしまいます。

ごく一部の人しか幸せを感じられないのであれば、
それはその人のせいでも、制度や体制のせいでもなく、
採用している価値観の問題だと思うのです。

なお、ここで私が申し上げているのは、
「認知症にはなりたくない」という
価値観の良し悪しではありません。

この価値観”だけ”しかないのが
問題と申し上げたいのです。

「認知症になりたくない」という思いは、
予防活動に駆り立てる原動力になってくれます。

しかし、認知症になった後は、

 
「ここまでは予防に取り組んできたが、
 これからは認知症と折り合って、幸せに暮らしていこう」
 
のように、価値観を変えることが大事と思います。

まるで、センチメートル単位の物差しから、
キログラム単位のはかりに取りかえるように、
価値観の度量衡を変えてしまうのです。

日進月歩で認知症のケアは発達していますし、
国も厚生労働省を筆頭に、認知症になっても
安心して暮らせる地域づくりを進めています。

そして、何より心強いのは、認知症になっても

幸せに暮らしている方がたくさんいらっしゃることです。
 
 
社会全体が認知症と折り合う方向に進んでおり、
それが実現しつつあることは、希望ではないかと思います。
 
 
繰り返しになりますが、歳をとればとるほど、
それは認知症専門医でも、予防に取り組んでいる人でも
誰もが認知症になる可能性はあるのです。

「いつかはなる認知症になっても、ならなくても

 私や家族が幸せに暮らせることには変わりがない」

このような感じで人生を生きるほうが、
認知症予防が本来目指す姿に近づいていけます。

「自分は認知症にどのようなイメージや考えを持っているのか」
 
それを見つめたり、話し合ったりするのは、
とても有意義ではないかと思います。

大事な判断をするとき、空腹時は避けるべし


社会生活を健全に営むうえで、
適切に判断できる能力が必要です。

実は、人はある状態のときには、
衝動的な判断をしやすい傾向にあり、
バカな行動をとってしまうことがあります。

ある状態とは「空腹時」のことで、
多くの方が実感されているかと思います。

じっくり考えられずに、行動したり判断したりすることを
「衝動性」といいますが、空腹時は衝動性が高くなるのです。

少し前の研究報告になりますが、
空腹時に分泌されるホルモンが脳に作用して、
衝動性を高めることがわかりました。

それは「グレリン」というホルモンで、
主に胃から分泌され、成長ホルモンの分泌を促進します。

成長ホルモンというと、子どもが成長するときにはたらく印象ですが、
成人では筋肉や骨、皮膚を強くするはたらきなどをしています。

グレリンは成長ホルモンの分泌を促すだけでなく
空腹時には食欲を増進させています。

つまり、体作りに必要な栄養素も
しっかりととるようにしているわけです。

スウェーデンの研究者らがラットを使った実験を行ったところ、
グレリンが衝動性を高めることがわかりました。

実験では、2つの選択肢がラットに与えられました。

少ないけれども、すぐにエサがもらえるレバーと
しばらく待つけれども、たくさんのエサがもらえるレバーが
用意されたのです。

ちなみにラットは賢いところがありますので、
学習すれば、きちんと待てるようになって、
たくさんのエサがもらえるレバーを押すようになります。

しかし、ラットにグレリンを投与すると、待てなくなり、
目先の押すとすぐにエサがもらえるレバーを押してしまったのです

逆にグレリンの投与を止めると、待てるようになり、
たくさんのエサがもらえるレバーを押すようになりました。

この結果から、

空腹になる

グレリンが分泌される

グレリンが脳に作用する

衝動性が高まる

ということがわかったのです。

実験ではラットを使っていますが、
グレリンは人でも分泌されます。

認知症で判断力が低下しているところに
空腹から衝動性が高まると、介護者を悩ます
行動が生じやすくなります。

食事前に気になる言動が目立つようなら、
介護する家族の小腹をちょっと満たしてあげると、
その言動が軽減するかもしれません。

また、介護者もときには重要な判断をする必要があります。
(医療や介護サービスの選択、家のリフォームの決断など)

身体のメカニズムから考えますと、
空腹時に大事な判断をするのは避けたほうが無難です。

また、神経伝達に欠かせない栄養素は、
カルシウムやマグネシウム、ビタミンB群
といわれています。

大事な決断の前には、
それらを多く含むアーモンドやバナナなどを食べて、
小腹を満たしておくとよいでしょう。

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【文献】
Rozita H Anderberg, et al.
“The Stomach-Derived Hormone Ghrelin Increases Impulsive Behavior”
Neuropsychopharmacology 41(5):1199?1209, (2016)


臭覚が衰えると、徘徊リスクも高まるかも?


認知症の中でも半数以上を占めるのが、
アルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症では、
記憶を司る海馬という脳内の部位が萎縮することで、
もの忘れの症状が出るようになります。

最近の研究から、この海馬が萎縮するよりも先に
臭覚から低下することがわかっています。

人の感覚には、
視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の5つがあり、
日常生活では視覚に大きく頼っています。

臭覚が低下しても、ご飯が美味しくなくなるぐらいで、
何とか生きていくには問題なさそうに思えます。
(人生の楽しみは減りますが)

臭覚と空間的記憶に深い関連があることを
確認した研究報告が最近発表されました。

空間的な記憶力が低下すると、
何か目的があって歩き始めたものの
道に迷ってしまうことになりかねません。

もし、認知症の方がそうなってしまうと、
その行為は「徘徊」と呼ばれることになります……。

研究報告の話に戻りましょう。

カナダのマギル大学の研究者らは
57名の健常者から協力を仰ぎ、実験をしました。

「嗅覚の課題」と「空間的な記憶の課題」のそれぞれの点数が
発達している脳のどの部分と関連しているのかを調べたのです。

実験の結果、嗅覚が優れた人ほど
空間的な記憶力がよい傾向にありました。

また、画像検査を使って、脳の構造を調べたところ、
嗅覚が優れた人≒空間的な記憶力がよい人ほど、
前頭眼窩野内側部と海馬が大きかったのです。

前頭眼窩野は、脳の底面の前方に位置しています。

逆に、前頭眼窩野内側部に損傷がある患者を対象に
実験したところ、嗅覚と空間的な記憶の課題が
うまくこなせないこともわかりました。

以上の実験の結果をまとめますと、
前頭眼窩野内側部が嗅覚と空間的な記憶に
深く関係していることになります。

逆から考えますと、臭覚の低下がみられるとき、
脳の病変に起因している可能性があります。
(別の原因の可能性もあります)

この場合、空間的な記憶力が低下している可能性も高く、
道に迷いやすい、つまり、徘徊のリスクも高いことになります。

認知症で介護する家族に臭覚の低下もみられる場合、
移動時に迷いやすいことも想定して、手を打っておくと
いいかもしれません。

トイレの案内をわかりやすくする、
徘徊対策グッズの利用を検討する、
地域と連携するなどが考えられます。

以前はできていたものが、脳の病気によりできなくなり、
生活に支障をきたすようになると、認知症と診断されます。

・これまでに道に迷うことはなかったのに、迷うようになった
 (若い時から方向音痴の方はさにあらず)
・最近臭いがあまり感じられなくなった

などの心配があるときは、脳に異変が生じている可能性があり、
早めに専門機関に相談されるのが勧められます。

ここで朗報がひとつあります。

脳と密接に関わっている臭覚を刺激することは、
脳を刺激し、認の活性化につながるとする研究報告もあります。

普段の生活の中で、嗅覚を鍛えるようにしたり、
趣味として香道(香りを鑑賞)をはじめたりするのは、
面白いかもしれません。

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【文献】
Dahmani L, et al.
“An intrinsic association between olfactory identification and spatial memory in humans”
Nature Communications 9, Article number: 4162 (2018)


先進国での認知症の有病率は低下傾向に


認知症患者の急増が、日本に限らず
世界規模で社会問題になっています。

認知症対策が喫緊の課題となっている中、
興味深いデータがあります。

それは先進国における「認知症有病率」の低下です。

有病率とは、ある地点、ある地域内の全患者数を
その地域の人口で割ったものです。

確かに高齢者の増加に伴い、
認知症患者の”数”自体は増えています。

しかし、先進国に限った場合、高齢者の中に含まれる
認知症患者の”割合”は減っているのです。

実は2005年の時点において、
米国の長期介護に関するデータから
認知症有病率の低下が報告されていました。

2010年代に入ると、英、蘭などの先進国からも
同様の報告が続々と上がるようになりました。

認知症の有病率が低下した要因がわかれば、
それは認知症予防にいかすことができます。

研究者らは各国の報告に共通する要因として

・若年期における教育の充実
・認知症に関する危険因子の減少

の2点を挙げています。

まずは「若年期における教育の充実」に焦点をあてて、
より詳しくみていきたいと思います。

まず指摘されているのは、
若年期に勉強に励んで頭を使ったことで、
脳内のネットワークが強化され、いわば
認知機能の蓄えができているという点です。

蓄えがある分、脳の老化や病気により
日常生活に支障が出るほど認知機能が低下するまで、
つまり、認知症の発症まで時間がかかることになります。

また、子どもの頃にきちんとした教育を受けることで、
いろいろな情報を受け取れるようになったり、
その情報を自分に適用する能力が身についたりします。

そうした教育の副次的な効果として、
健康に良いものを選んで、悪いものを避ける、
適切に医療を利用するなど、多くの人が
健康を自己管理できるようになりました。

例えば、誰しも腹部が大きくなってくると、
「運動をはじめないとなあ」と危機感を感じるものですが、
これも教育の効果のひとつです。

もし、教育がなかったら、
メタボ体型になろうが、危機感ひとつ感じることなく、
そのままの生活を送り続けることでしょう。

あと、認知症かどうかの判断には
生活が自立しているかどうかが重要になっています。

現代のように高度化された社会に適応するには、
それなりの教育レベルが求められます。

ただ、現代の先進国における高齢世代は、
教育制度が充実しはじめたときに教育を受けた
初めての世代にあたります。

子どもの頃に受けた教育によって
社会に適用するさまざまな能力を身につけたことで、
生活の自立の低下がゆるやかになっていると思われます。

これらのさまざまな要因が重なって、
先進国での認知症の有病率を下げていると考えられています。

以上、若年期における教育の充実が、
認知症の有病率の低下に寄与していることをみてきました。

同時に、歳をとってから頭を使う活動を行っても、
認知機能の低下を遅らせられるという研究もあります。

認知症予防は子どもの頃からスタートしているといえ、
学びは生涯かけて続けていくものといえましょう。

学び続けることは、認知症予防だけではなく、
人生全般の幸福や豊かさにもつながっていきます。

ここからは「認知症に関する危険因子の減少」に焦点をあてて、
より詳しくみていきたいと思います。

先進国では医療が発達しており、
病気になっても適切な治療を受けられるほか、
予防医学の取り組みも広がっています。

その結果、認知症に関連する危険因子が減少し、
その分認知症患者も少なくなったと思われます。

認知症につながる危険因子の中でも、
特に重要なのが血管に関する病気です。

脳の細胞は栄養や酸素を絶えず必要としており、
それらは脳に張り巡らされた無数の血管を通して
送られているからです。

米国の高齢者を対象にした大規模な調査研究では
次のような報告がされています。

2000年時点での10,546例(平均75.0歳)と
2012年時点での10,511例(平均74.8歳)について
認知症有病率と健康状況をそれぞれ比較しました。

その結果、認知症有病率は
2000年の11.6%に対して、2012年には8.8%に
低下していたのです。

次に健康状況を調べたところ、
2000年から2012年にかけて、血管リスクに関連している
糖尿病、肥満、高血圧の割合は増加していました。

その一方で脳卒中の有病率は変化がみられませんでした。

血管系の病気にかかりやすい予備群が増えているのに、
脳卒中の発症数はあまり変化していないのは、
医療的にうまくコントロールされていることを意味しています。

病気になっても適切な治療を受けることは
認知症の発症リスクの抑制につながります。

病気の心配があるときは軽視することなく、
早めに医療機関に相談することが勧められます。

また、糖尿病、肥満、高血圧から改善できるのであれば、
認知症の有病率の低下、さらには認知症の患者数自体の減少も
期待できることになります。

日頃から食事に気を配り、運動を心がけたりしながら、
糖尿病などの病気の予備群に陥らないことを目指しましょう。

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【文献】
Claudia L., et al.
“Incidence of Dementia over Three Decades in the Framingham Heart Study”
N Engl J Med (2016)

Langa KM, et al.
“A Comparison of the Prevalence of Dementia in the United States in 2000 and 2012”
JAMA Intern Med, 177(1):51-58, (2017)


昼間の眠気とアミロイドβの蓄積との関係


アルツハイマー型認知症は、認知症の半数近くを占めており、
アミロイドβという異常なタンパク質の蓄積が原因と考えられています。

このアミロイドβは健康な人の脳でも作られていますが、
通常は脳内のゴミとして扱われ、短期間で分解され排出されます。

ただ、アミロイドβが排出される量より蓄積する量が増えると、
たまったアミロイドβにより神経細胞が壊れて、脳が萎縮し、
やがては認知症の発症を招くことになります。

そのため、認知症予防を考えるうえでは、
アミロイドβを脳内にいかにためないようにするかが、
大切なポイントになります。

そして、ここに米国メイヨー・クリニックの医師らが
昼間の眠気とアミロイドβの蓄積との関係を調べた研究があります

調査開始時に認知症でなかった高齢者(平均約77歳)に対して、
7年にわたり追跡調査を行い、アミロイドPET検査の同意を得られた
283人に対して検査を実施しました。

アミロイドPET検査は、脳内でのアミロイドβの蓄積を捉えることができます。

調査の結果、高齢者で昼間に過度の眠気を感じる人は
アミロイドβが蓄積しやすいことがわかりました。

研究者らはこの結果を踏まえ、

日中の過度の眠気を誘うような状態を改善することは、
アミロイドβの蓄積を防ぎ、アルツハイマー型認知症の予防に
つながる可能性があるとしています。

何か事情があり、一日徹夜したからといって、
そのことで大きく健康を損なうことはありません。

ですが、昼間に眠気を感じるのが毎日続くようであれば、
アミロイドβの蓄積を招き、将来のアルツハイマー型認知症の
発症リスクを高める可能性があります。

日中に増えたアミロイドβを排出するには
6時間半以上の睡眠が必要とする専門家の意見もあります。

睡眠時間が慢性的に不足していないか、
一度生活習慣を振り返るとよいでしょう。

良質ともによい睡眠を心がけることは、
日頃の心身の健康を維持するだけではなく、
将来の認知症の発症リスクを抑制することにもつながります。

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【文献】
Diego Z. Carvalho, et al.
“Association of Excessive Daytime Sleepiness With Longitudinal β-Amyloid Accumulation in Elderly Persons Without Dementia”
JAMA Neurol (2018)


日本人高齢者が認知症になりにくい生活スタイル


今では地球規模の問題になっている認知症。

そのため、世界中の研究機関が
効果的な認知症予防の解明に取り組んでいます。

超高齢社会を迎えた日本も例外ではなく、
国内のさまざまな機関が認知症予防の研究を行っています。

愛知県にある国立長寿医療研究センターの研究者らが発表した
認知症予防に関する研究報告があります。

日本在住の65歳以上の高齢者4,564人を対象に、
生活スタイルと認知症発症との関連を調査しました。

調査結果をまとめたところ、平均して約42ヶ月後に
219人(4.8%)が認知症を発症していました。

認知症を発症した人としなかった人とを統計的に比較したところ、
認知症になりにくい高齢者の生活スタイルが明らかになりました。

<<認知症になりにくい高齢者の生活スタイル>>

・日常的な会話(0.56倍)
・自動車運転(0.63倍)
・ショッピング(0.57倍)
・フィールドワークやガーデニング(0.71倍)

研究者らはこの結果を踏まえて
「高齢者がこれらの生活スタイルを送ることは、
 認知症予防において重要な役割を果たすと考えられる」
としています。

認知症になりにくい生活スタイルとしてわかったのは、
いずれも家の外で行う活動でした。

高齢者の認知症予防を考えるうえでは、
自宅に閉じこもるのではなく、
外に出かけることが大切といえます。

高齢になると、体を動かすのがどうしても億劫になります。

そのため気分にまかせていますと、
外出しないまま一日を過ごしがちになります。

そうならないために、外出の用事を積極的に作るとよいでしょう。

特に人と会う約束は、予防効果がより期待できる
日常的な会話が行われますし、楽しい活動ですから長く続きます。

今回は日本の研究者が、日本人の高齢者を対象にした
認知症予防の研究を取り上げました。

認知症予防がより身近に感じられたのではないかと思います。

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【文献】
Shimada H, et al.
“Lifestyle activities and the risk of dementia in older Japanese adults”
Geriatrics & gerontology international (2018)


江東区社会福祉協議会様での講演会において、認知症予防講演を実施


2018年9月21日(金)に、高齢者総合福祉センター(東京都江東区)にて、江東区社会福祉協議会様からのご依頼で認知症予防講演を実施しました。

東京都健康長寿医療センターの小川将先生が講師として登壇され、「今日からはじめる認知症予防」という題目で120分にわたり、認知症の予防と将来の発症に備えて心がけたいことについてお話いただきました。

区内でボランティア活動をされている約40名がご参加され、参加された皆さまからは大変な好評をいただきました。

小川先生は講演の中で、

「認知症と予防法について正しく理解し、自分にあった認知症予防を実践すること」

「日常的なストレスは認知機能の低下を招くが、人とのつながりがストレスの受け止め方を良くし、予防につながる」

など、認知症予防や将来の認知症に備えたときのお話をされました。

認知症は、脳の老化が影響しているため、誰もがいつかはかかる可能性がある病気です。

健康なうちから予防活動に努めることで、認知症の発症時期を遅らせることが可能性が高まります。

また、早い段階から将来の認知症発症に備えた準備をすることで、選べる選択の幅が広がります。

特に将来の認知症発症に備えて重要となるのは、人とのつながりです。

人とのつながりがある人は、認知症発症後でも、周囲から手助けを受けながら、発症前と変わらない生活を送るくことができます。

今回の認知症予防講演をきっかけに、地域活動と密着した認知症予防が実施されるのを期待しています。

当法人がまず目指しているのが、認知症に対してどのようにしていけばいいの?と不安を抱えている方々に、正しい認知症とその予防の知識を提供することで、まずは安心していただくことです。

認知症を100%避けることは、現代の医学では不可能で、全員が認知症を発症するリスクがあります。

ですが、適切な活動を行うことで、認知症の発症を遅延させることは十分に可能です。

もし、高齢者の認知症発症を5年遅らせることができれば、認知症発症者は当初の予想よりも半減(約350万人減)するという試算もあります。

認知症に対する不安を解消し、人生の質を高めるために、認知症の正しい理解と予防方法を、当法人は広げていきたいと願っています。

今回の機会を与えてくださった、江東区社会福祉協議会の関係者の皆さまに感謝申し上げます。

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一般社団法人元気人では、認知症予防講演会における講師の出張派遣を行っております。

認知症予防研究の専門家や講演歴豊富な認知症予防活動支援士などが、「物忘れと認知症との違いは?」「認知症予防のメカニズム」「認知症になっても、人生の質をさらに上げるには?」などを、最新の研究事例を踏まえながら、わかりやすくお伝えします。

認知症予防の講演会を実施するにあたり、講師をお探しの方は、認知症予防 出張講演のページまでどうぞ。


中高年で禁煙ができない人はせめて休みには○○を


喫煙によって、脳卒中や心筋梗塞、そして認知症など、
さまざまな病気のリスクが高まることがわかっています。

それでも確信犯的に喫煙している人がいる反面、
「どうしてもたばこをやめたい」と思いながらも、
そのまま続けて吸ってしまっている人もいます。

ただ、中高年で禁煙ができない人に、
ちょっと朗報となる研究報告があります。

スウェーデンの研究者らが
1970~1973年の間に満50歳だった男性2,205人を
35年にわたり追跡調査しました。

調査では、開始時に運動量の程度を尋ね、
対象者を3つのグループに分けました。

低グループ)
余暇はじっとして過ごすことが多い

中グループ)
よくウォーキングやサイクリングを楽しんでいる
もしくは、毎週、娯楽的なスポーツやガーデニングを
少なくとも3時間はしている

高グループ)
ハードトレーニングや競技スポーツを定期的に行っている

そして、運動量と死亡率の関連を調べたところ、
「低グループ」→「中グループ」→「高グループ」の順に
死亡率が低下していました。

つまり、運動している人ほど長生きしており、
死に至るような重い病気にかかるリスクが低かったと
考えられます。

また、50~60歳の間に運動量が増えた人について
5年後、10年後の死亡率も調べられています。

その結果を受けて、研究者は
「50~60歳の間に身体活動を増やすことは、
 禁煙と同じくらい死亡率を減少する効果が期待できる」
と語っています。

中高年で禁煙ができないお父さんは、
せめて休日ぐらい家でごろごろしていないで、
体を動かすことが勧められます。

たばこを吸い続けているのに運動をしない
お父さんにおかれましては

たばこを吸うのをやめるのか
それとも何か運動をはじめるのか、

いまここで決断するときがきました。

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【文献】
Byberg L, et al.
“Total mortality after changes in leisure time physical activity in 50 year old men: 35 year follow-up of population based cohort”
BMJ Mar (2009)


30代で肥満だった人は認知症リスクが高い


一般的に30代以降は太りやすいといわれています。

消費カロリーは年々落ちているにもかかわらず、
食べる量や内容が20代の頃とあまり変わらず、

また、仕事や家庭で忙しくなり、活動量も減ってしまうことで、
カロリーオーバになっているためです。

太り気味の30代の人がどきっとする研究報告を、
英国オックスフォード大学の研究者らが発表しています。

研究者らは、英国の全国の病院で1999~2011年の12年間にわたり、
肥満と判定された45万1,232人の患者の診療記録を調べました。

その結果、30代で肥満と診断された人は、
肥満でない人と比べて認知症の発症リスクが
3.5倍も高いことがわかったのです。

40代で肥満と診断された人は1.7倍に、
50代では1.5倍にそれぞれ上昇していました。

肥満の解消に向けて、30代から
食生活の改善や運動に取り組んで減量することは、
将来の認知症予防につながることになります。

減量を実現するうえでは、食生活の改善が特に大切であり、
これを抜きにして運動に励んでも、減量効果はあまり期待できません。

食事は総摂取カロリーを抑えつつも、
栄養バランスがよく、食物繊維の多い食事を
心がけたいところです。

炭水化物(ご飯や麺類)の食べ過ぎや脂肪(肉類)のとり過ぎ、
お菓子の間食、多量飲酒は、肥満につながりやすいため注意が必要です。

また、今回の研究を踏まえますと、認知症予防は
30代からでも取り組むのに早過ぎることはないのです。

「認知症予防は高齢者がするもの」という常識は
今では過去のものといえましょう。

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【文献】
”Early to mid-life obesity linked to heightened risk of dementia in later life”
BMJ-British Medical Journal (2014)