イチョウ葉エキスに認知症予防効果はある?なし?


東京大学の校章になっている「銀杏(イチョウ)」。

イチョウは、東大はおろか
恐竜がいた時代よりも昔から生息していたとされ、
その起源から「生きた化石」と称されるほどです。

古代の中国ではイチョウのもつ薬効に注目し、
種は漢方薬として何千年も前から使われています。

また日本では、イチョウの葉から抽出したエキスは、
民間療法として、喘息や気管支炎、耳鳴りなどの治療で
用いられてきた歴史もあります。

イチョウの葉には、強い抗酸化作用(老化防止作用)があり、
神経細胞の保護作用や脳の血流改善作用が期待されてきました。

そのため、イチョウ葉エキスは、
アルツハイマー病や他の認知症にも効果があるのではという
仮説のもと、数多くの研究がなされてきました。

イチョウ葉エキス製品(EGb-761)を用いた米国の研究から、
高齢者の認知症やアルツハイマー病に対する発症抑制の効果は、
「ない」ことがわかっています。

EGb-761はドイツDr.W.シュワーベ製薬が開発した
イチョウ葉エキス製品の商標で、イチョウ葉エキスの
標準的な製品に位置づけられています。

つまり、業界のスタンダード製品を使って実験してみたけれども、
効果が見られなかったのです。

さらにデータを分析した結果、イチョウには
認知機能の低下を遅らせたり、血圧を下げたり、
高血圧の発症を抑えたりする効果も「ない」ことが
明らかになっています。

イチョウ葉エキスの効果が期待できないとする論文が
他にも報告されており、認知症予防については
過度の期待はしないのが無難といえます。

また、海外では医薬品として扱われるほどであり、
過剰摂取や薬との併用で思わぬ副作用の可能性もあります。

なお、日本ではイチョウ葉エキスは、
サプリメントとして手軽に入手することができますが、
アレルギー物質のギンコール酸をしっかり除去していない
製品もあるようです。

以上を踏まえますと、
認知症予防を期待してイチョウ葉エキスを飲み続けるのは、
賢い選択ではないといえます。

認知症予防は長く続けてこそ効果が期待でき、
それこそ死ぬまで続けることが望ましいため、
コストパフォーマンスの視点も大切にしたいところです。

そのコストパフォーマンスのよさからいえば、
科学的根拠がたくさんあり、お金もさほどかからない
「運動」に軍配があがります。

また、運動しているお父さんでしたら、
していないお父さんよりもモテる可能性があるため、
モテパ(モテるパフォーマンス)の高さも見逃せないと思うのです。
(残念ながら、これは個人の体験談になります)

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【文献】

Snitz BE et al.
“Ginkgo biloba for preventing cognitive decline in older adults:
a randomized trial”
JAMA ; 302(24) : 2663-2670 (2009)


働き盛りのお父さんにこそ運動が必要な理由


運動が心身ともに健康に寄与することは多くの人が知っています。

ですが、知っている=やっているとは限らないものです。

身体を動かして運動してこそ、健康につながるものですが、
実際にどのくらいの人が運動しているものでしょうか?

厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」によると、
運動習慣がある人の割合は男性で約35%、女性で約27%でした。

 ※運動習慣がある人とは、1回30分以上の運動を週2回実施し、
  一年以上継続している人と定義されています

これは全年代をトータルした数値になりますが、
年齢別にみてみますと、その割合は男女ともに
30〜40代が低い傾向にあります。

ちなみに最も低いのが30代で、
男性約18%、女性約10%という割合になっています。

30〜40代は働き盛り、子育て盛りで、
仕事や家事、育児などで公私ともに忙しく、
運動したくてもなかなか時間がとれない人が多いと思います。

ただ、それでも時間を割いて運動をしたい理由が、
別の統計データから示されています。

スポーツ庁の「平成28年度体力・運動能力調査」によると、
30~40代の体力低下が、ほかの世代に比べて深刻であることが
わかりました。

体力テストの点数の低下は、運動習慣のなさからきていますが、
30〜40代では特に持久力と瞬発力の点数がよくありませんでした。

これは筋力全般が衰えていることを意味しており、
高齢期におけるロコモティブシンドローム、
しいては要介護状態を招きやすい要因です。

また、アミロイドβというタンパク質のゴミは、
アルツハイマー病の原因物質と考えられていますが、
40代以降から脳内にたまりはじめるといわれています。

認知症において、運動不足は危険因子であり、
運動習慣は抑制因子であります。

この時期から運動に努めることは、体力低下を防ぎつつ、
将来の認知症予防や発症遅延にもつながります。

特に今の30〜40代が高齢期を迎える2060年は、
2.5人に1人が65歳以上になると推計されています。

この頃の介護労働力の不足は今の比ではなく、
望む介護を受けられない可能性が高いと思われます。

つまり、健康を維持して、要介護にならないことの価値が
さらに高くなることになります。

健康は日常生活における習慣の積み重ねです。

しかも運動は投資した分だけ健康へのリターンが見込める
確実性の高い活動のひとつです。

株式投資をされているお父さんも多いかと思いますが、
投資に対する確実性と得られる価値からしますと、
運動しない理由はありません。

運動習慣がない人は
まずは歩くことからはじめてはいかがでしょうか?

例えば、日頃使っている
エレベーターやエスカレーターの利用を止めて
階段で登り降りするだけでも、運動効果は期待できます。

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【参考】
平成28年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)

平成28年度体力・運動能力調査(スポーツ庁)


暮らしの中に現れる認知症のサイン


認知症は、ある日を境に突然発症するものではありません。

アルツハイマー型認知症の場合、
認知症をもたらす脳の病変は十年単位で進行していくため、
症状もゆっくりと現れてくるのがほとんどです。

認知症の予防もしくは発症遅延のためには、
認知症のサインに早々に気がついて、
早めに手を打つことが大切になってきます。

認知症の予備群といわれている軽度認知障害(MCI)。

症状がMCIに進行したことに早く気づいて、
予防や生活改善に取り組むことで、正常に戻ったり、
進行を遅らせたりできる可能性があります。

また、認知症になった後では、
新しいことを覚えたり、別の環境に慣れたりするのは
なかなか難しいものです。

認知機能がまだ残っているうちに準備を進めておくことで、
後の介護の状況は随分と変わってきます。

認知症の初期段階では、記憶障害が見られるとしても、
コミュニケーション能力や社交性、プライドなどは
かなり残されています。

そのため、本人はつじつまを合わせたり、
上手く取り繕うこともできるため、その様子から
周囲は安心してしまうところがあります。

ですが、認知症のサインとして
特徴的な現れ方をするものがあります。

<暮らしの中に現れる認知症のサイン:言動編>
・待ち合わせの場所や時間の間違いや忘れが増えた
・バスや電車などを使っての外出が減った
・人に会うことを控えるようになった
・月や季節を間違えることがある
・質問されたとき、自分で答えず人に聞くようになった
・料理の品数が減り、調理に時間がかかっている
・鍋に火をかけていたことを忘れて、よく焦がしている
・朝話したことを午後には忘れている
・子どもや孫の名前を混同する

<暮らしの中に現れる認知症のサイン:環境編>
・しまい忘れや置き忘れが多くなった
・収納棚や食器棚の整理ができなくなった
・思わぬ場所にあり得ないものが見つかった
 (タンスの中からリンゴなど)
・同じ商品の買い置きがいくつもある
・水の出しっ放しが増えた

以前と比べて、思い当たる変化がいくつかあるようであれば、
一度、専門医に相談するとよいでしょう。


ここが違うよ!老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れ


歳をとれば誰もが身体機能の衰えを感じるものです。

衰える時期や程度には個人差がありますが、
近くが見えにくくなったり、耳が遠くなったり、
シワが増えたり、動作がゆっくりになったりなどします。

お父さんにおかれましては、
髪の毛の量が気になっておられるかもしれません。

これらの老化現象は目に見える身体面だけでなく、
目に見えない脳内にもしっかりと訪れます。

人の脳神経細胞は、
出生時には大人とほぼ同じ数(140億個)ができており、
成長とともに相互ネットワークを形成していきます。

この脳神経細胞も、
20歳を過ぎると1日に約10万個ずつ減っていき、
80歳までに約22億個が死滅するといわれています。

しかし、脳神経細胞間の相互ネットワークや
失われた機能を代替するはたらきが脳にはあり、
大人になったからといっても、脳機能が著しく
低下することはありません。

とはいえ、加齢とともに脳機能が衰えるのは避けられず、
その際に「もの忘れ」の症状がみられるようになります。

もの忘れの症状として、

・昨日の夕食のメニューが思い出せない
・テレビでよく見る芸能人の名前が出てこない
・何を取りに行ったのか忘れてしまった

ということを、歳をとった人であれば、
ひとつやふたつ体験しているものです。

記憶障害は認知症の代表的な障害のため、
もの忘れの回数が増えてくると、
「そろそろ、わしもボケたのかのー」
と心配になっているお父さんもいらっしゃるかもしれません。

これらの症状は、老化によるもの忘れとして
認知症によるもの忘れとは区別されます。

老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いを知っておくことで、
不要な心配をなくしたり、もしもの時の早期発見につながったりします。

<老化によるもの忘れの特徴>
・人や物の名前などを思い出せる
・体験の一部分を忘れる
・ヒントがあれば思い出せる
・判断力は低下しない
・もの忘れを自覚している

<認知症によるもの忘れの特徴>
・日々の体験や出来事を覚えていられない
・体験の全体を忘れる
・ヒントがあっても思い出せない
・判断力が低下する
・もの忘れを自覚していないか乏しい

例えば、アルツハイマー型認知症では
何度も同じことを尋ねる症状がみられることがあります。

その尋ねた経験そのものを忘れてしまうことから生じていますが、
本人の中では「大事なものだから覚えよう」という思いがあるため、
(忘れたとしても)何度も確認しようとするのです。

本人や家族の中で、もの忘れの症状がひどいと思い当たる場合は、
一度専門医に受診するようにしましょう。


糖尿病×喫煙で死亡率は1.55倍に


ゲームの世界では、
必殺技Aと必殺技Bを組み合わせて繰り出すことで、
さらに攻撃力が増すというしかけがあります。

そして、病気の世界でも、破壊力が増す
組み合わせというものが存在します。

そのひとつが糖尿病×喫煙という組み合わせです。

糖尿病はさまざまな合併症を起こす可能性があり、
目や腎臓の病気、手足のしびれ、免疫力の低下のほか、
最悪のケースでは、死に至ることもあります。

喫煙もがん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、高血圧など、
全身の病気の発症リスクを高めます。

ここに、2015年までに発表された
喫煙と死亡率に関する研究をまとめた報告があります。

その結果、糖尿病を患ってたばこを吸う人は、
全体の死亡率が1.55倍ほど高くなることがわかりました。

また、一度もたばこを吸ったことがない人と、
過去は吸っていた(今は禁煙)人とを比べたところ、
全体の死亡率は1.19倍ほどでした。

実際に糖尿病患者の喫煙率は高い傾向にあるといわれており、
糖尿病と喫煙はいずれも認知症の危険因子でもあります。

以上のことから考えますと、糖尿病の治療や改善では、
血糖値のコントロールのほかに禁煙が欠かせず、
同時に取り組む必要があることになります。

ですが、取り組むメリットも十分にあり、
死亡率と同時に、認知症の発症リスクも下がることになります。

健康で長生きできることになりますので、
その分人生を満喫する時間が増えることになります。

また、糖尿病も喫煙もその治療や改善のプロセスにおいて、
自分の欲求よりも健康につながる原則を優先させる習慣を
身につけていくことになります。

この自分の欲求よりも原則を優先させる習慣は、
健康に限らず、仕事でも家庭でも人間関係でも
大切になってくる習慣です。

つまり、糖尿病や喫煙の治療や改善に取り組むことは、
健康のみならず、人生全般がよくなっていくきっかけにもなるのです。

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【文献】
Pan A, et al.
“Relation of Smoking With Total Mortality and Cardiovascular Events Among
Patients With Diabetes Mellitus: A Meta-Analysis and Systematic Review.”
Circulation 132(19);1795-1804 (2015)


認知症になりにくい性格とは


認知症の要因は加齢によるところが大きいですが、
長年にわたって続けてきた生活習慣も、
認知症の発症に関係しているといわれています。

生活習慣とはパターン化された行動で、
その行動は考え方や性格によって人それぞれです。

ということは、その人の考え方や性格が、
認知症の発症に何かしらの影響を及ぼしていそうです。

米国フロリダ州立大学の研究者が
最大6年間の期間中に1回以上の認知機能測定を実施した
1万1,181件を分析しました。

性格と認知症との関連性を調べたところ、
「責任感がある」人は、そうでもない人と比べて
発症リスクが約35%低かったことがわかったのです。

また、「自制心」や「勤勉さ」も
認知症の発症リスクの低下に関係していました。

責任感がある人には、
歳をとってからも何かと仕事や役割が与えられ、
普段から活動的な生活を送っています。

自制心がある人は、自分の感情や都合よりも
健康につながる行動を優先させることができます。

勤勉な人は、運動にせよ、食事スタイルにせよ、
知的活動にせよ、積極的に取り組みます。

また、責任感がある、自制心がある、勤勉である
これらをひと言でまとめると、多く人は「誠実」と称します。

誠実な人には、周囲から人が集まってきて、
しかも、いろいろな人ともうまく関係を築くことができます。

誠実な人は、認知症になりにくい生活スタイル

・運動習慣
・食事スタイル
・知的活動
・人とのつながり

を自ずと実現しやすいことに気がつきます。

認知症予防のために、何かを実践するのは
「どうも面倒くさいなあ」という方は、
今日から「誠実な人」を心がけてみてはいかがでしょうか?

最初の頃は、誠実な人のフリでもかまわないと思います。

そのフリも続けていけば、やがて本物になり、
あれほど面倒くさがっていた認知症予防も、
今では熱心に取り組んでいる自分に気づくことでしょう。

なぜなら、責任感があって、自分をコントロールできて、
何事も勤勉に取り組む誠実な人になったのですから。

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【文献】
A R Sutin, et al.
“Facets of Conscientiousness and risk of dementia”
Psychological medicine. Sep 06;1-9 (2017)


MCIから正常に戻れた人と戻れない人の違い


認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)。

認知症とは診断されないまでも、
認知機能の低下によりもの忘れがひどいなど、
正常とも言い切れない時期のことをいいます。

国立長寿医療研究センターが
愛知県大府市に住む65歳以上の高齢者を対象に
4年間追跡調査した研究結果があります。

認知症になっていない約4,200人のうち
最初の検査時に18%(約740人)がMCIと判定されました。

4年後に同じ検査を行ったところ、MCIだった人のうち
46%(約340人)は正常に戻り、40%(約300人)はMCIのまま
14%(約100人)は認知症に進行していました。

大府市では「健康都市」をまちづくりの理念にかかげているため、
総じて住民の健康意識は高いと考えられます。

そのことが功をなして、この数値となった可能性はありますが、
大事なことは数字よりも『戻れる人が必ずいる』という事実です。

この事実を知っていれば、MCIと診断されたとしても
ただただ不安になって、辛い思いをする必要はありません。

MCIから正常に戻れる希望は十分にあるのですから、
ここで心機一転、認知症予防に取り組むことが大切です。

実際に正常に戻ってきた人の体験談が
書籍や雑誌、インターネット上にまとめられていますので、
それらを読んでいますと励みになります。

逆によろしくないパターンとしては、
気落ちして、家に閉じこもってしまい、何もしないことです。

また、東京医科歯科大学・脳統合機能研究センター特任教授、
かつメモリークリニックお茶の水理事長の朝田隆氏は、
MCIから正常に戻れた人と戻れない人の違いとして、
多数の診断結果を踏まえて、次のように話しています。

<MCIから正常に戻るのが難しい人の傾向>
・他人となかなか話そうとせず引っ込み思案の人
・全部自分で抱え込んでしまう人
・プログラムを恥ずかしがったり、バカにする人
・家の中に閉じこもりがちの人

<MCIから正常に戻る人の傾向>
・話ができなくても自ら輪に入ろうと努力する人
・楽しんで積極的に取り組んでいる人

(出典:週刊文春 2017年7月27日号 表現を一部改変)

これらは本人の性格ともいえますが、
過去において人生で起きたあらゆる出来事に
どのような姿勢で取り組んできたのかの集大成ともいえます。

性格とは、日々の小さな選択と行動が繰り返されることで、
思考や行動のパターン(癖)となったものだからです。

その意味では、日々の小さな出来事に対して、
斜に構えて何もしないのではなく、前のめりに取り組むことが、
将来の認知症の予防や発症遅延につながるといえます。


社会とのつながりが認知症予防につながる


「がんになっても認知症にはかかりたくない」

・・そのような切実な思いを
口に出される方は少なくありません。

「認知症=人生の終わり」という
誤解と偏見から生じているところもありますが、
認知症にかからないに越したことはありません。

ちなみに、認知症だから人生が終わるのではなく、
そこであきらめるから終わることには注意が必要です。

その意味では、
認知症に対する正しい理解が求められますが、
認知症予防についても同じです。

そして、日常生活における小さな習慣が
認知症の予防や発症遅延につながることは
是非とも知っておいてほしいと思います。

ここにスウェーデンのストックホルムに在住する
1,203人を平均3年間追跡した調査研究があります。

下記の項目にいくつ該当するかで対象を4段階にわけ、
社会的ネットワークが認知症の発症にどのような影響を
及ぼしているのか、その関係性を調べました。

<社会的ネットワークの状況>
1)結婚して同居している
2)子どもと日常的に接触している
3)親族または友人と日常的に接触している

認知症の発症リスクについて、
3つとも満たす人と比べた場合、
2つを満たす人で2.61倍
1つを満たす人で3.65倍
いずれも満たさない人で8.25倍
という結果であることがわかりました。

家に閉じこもりがちで、社会から孤立した状況は
認知症を招きやすいことになります。

逆に、家族や友人との人付き合いが多い人は、
外出する機会が増え、身体を動かすことが多くなります。

また、人と会って会話をすることは、
それだけでも頭を使うことになりますし、
周囲の人に気を配る、身なりを整えることも
脳の活性化につながります。

嫌なことがあっても、誰かに話してスッキリした!
という経験は、多くの人がもっているものです。

ストレスは脳や身体にダメージをもたらしますが、
会話はストレス解消のきっかけにもなります。

社会とのつながりをひとつずつ見ていけば、
それは小さな変化をもたらすだけかもしれませんが、
積み重なることで認知症予防にもつながるのです。

また、新しいことに主体的に取り組むとき、
脳はフル回転することになります。

そのため、やったことがない人ほど
地域の趣味活動やボランティアなどに
取り組むようにするとよいでしょう。

認知症予防の効果が期待できるばかりか、
新たな出会いが刺激となり、人生にさらなる彩りをそえてくれます。

ここで、要介護の認定を受けている
ある高齢男性の事例をご紹介したいと思います。

絵本の読み聞かせボランティアへの参加をきっかけに、
積極的に活動にかかわるようになりました。

要介護の認定を受けているとは思えないほど、
幼稚園や小学校などで子どもたちを相手に
楽しく絵本を読み聞かせておられます。

「生きがいができた」と話されるその方は
今でも認知症とは無縁な日々を過ごしておられます。

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【文献】
Fratiglioni L, et al.
“Influence of social network on occurrence of dementia:
a community-based longitudinal study”
Lancet ; 355 :1315-1319 (2000)


積極的に楽しむ日常生活そのものが認知症予防につながる


多くの場合で、認知症はある日突然発症するわけではなく、
徐々に認知機能の低下が進んでいきます。

そのため、認知症とは診断されないまでも、
もの忘れがひどい、様子がおかしいなど、
正常とも言い切れない時期が存在します。

こうした正常と認知症の境目にいる時期を
「軽度認知障害(MCI)」といいます。

MCIをこのまま放置すると、認知機能はさらに低下し、
5年間で約40%の人がMCIから認知症にステージが
進行するといわれています。

MCIのまま症状がとどまる人のほか、
MCIから正常に戻る人も報告されています。

こうしたことから、
MCIの人は認知症予備群として注目され、
早期発見・早期対応が必要とされています。

このMCIの時期に低下しやすい認知機能があり、主として
「エピソード記憶」「注意分割機能」「計画力(思考力)」
の3つがあげられています。

◎エピソード記憶
 体験を記憶して思い出す機能

◎注意分割機能
 2つ以上のことを同時に行うときに
 適切に注意を配る機能

◎計画力(思考力)
 新しいことをするときに
 段取りを考えて実行する能力

これらは日常生活のさまざまなシーンで使われる機能のため、
いずれかひとつが低下しても日常生活に困難が生じます。

逆に、この3つの認知機能を鍛えておくことで、
MCIへのステージ移行、しいては認知症への進行を
遅らせることにつながります。

これら3つの認知機能を鍛えるには、
何か特別なトレーニングをしなければいけないと
難しく考える必要はありません。

二日遅れの日記やレシートを見ないでつける家計簿、
料理や旅行、園芸やパソコンなどの趣味活動、
囲碁や将棋、麻雀、トランプなどのゲームには、
3つの認知機能を鍛えることにつながる要素が
たくさん含まれています。

これらは日常生活のなかに取り入れやすく、
趣味活動であれば、生活に楽しみをもたらしてくれます。

楽しさを感じる取り組みは、人は長続きしますし、
長続きするため、認知症予防の効果もその分期待できます。

自宅に引きこもってゴロゴロするのではなく、
積極的に生活を楽しむという生き方そのものが
脳を鍛えることになり、認知症予防につながります。

また、人とのつながりが生まれやすい
趣味活動やボランティア活動を選ぶのであれば、
日常生活にさらなる刺激と楽しさが加わることでしょう。

日常生活を楽しむ+人とのつながりが生まれるという組み合わせは、
認知症予防に向けた好循環の流れを拡大させていきます。


認知症予防も歯が命


認知症の発症と食事スタイルとの相関関係が
最近の研究から明らかになっています。

抗酸化作用の高い食材を中心に
バランスのとれた食事をとることは、
認知症予防につながるといわれています。

この食事の際に必要となる器官は「歯」です。

歯がしっかりと残っていることで、
食べたものが咀嚼されて、栄養素が
効率よく体内に吸収されることになります。

その意味では、
「何を」食べるかを意識すると同時に
「どう」食べるかにも気を配りたいところです。

また、歯の残存数と認知症の発症との関連も指摘されています。

愛知県の65歳以上の健常者4,425名を
3~4年間追跡調査した研究があります。

この調査研究から、
歯がほとんどなく入れ歯を使用していない人は、
歯が20本以上残っている人と比較して、
認知症の発症リスクが最大1.9倍に高まることがわかりました。
(Yamamoto T,Psychosomatic Medicine 2012)

また、歯が残っている人ほど、転倒や要介護状態になる
危険性が少なくなることも指摘されています。

ちなみに、歯を失っていたとしても
入れ歯をしっかりと使用している人では、
歯が20本以上残っている人と比較して、
認知症の発症リスクが特段高くなるわけではありませんでした。

できるだけ自分の歯を残すこと、もしくは
歯の喪失後は適正な入れ歯を使用することは
認知症の予防につながります。

ちなみに歯を失う主な原因は、むし歯と歯周病です。

日頃からお口のメンテナンスをしっかりすることや
定期的に歯科検診を受けることが大切になります。

歳をとって歯が抜けるのは、
老化によるものだから仕方がないと思いがちです。

ですが、むし歯や歯周病を正しく予防・治療することで、
歯の喪失を防ぐことは十分にできます。

むし歯と歯周病の予防法は、
日本歯科医師会が運営するサイトが参考になります。

歯とお口のことなら何でもわかる「テーマパーク8020」
https://www.jda.or.jp/park/trouble/contents.html

なお、喫煙は歯周病の大きな危険因子でもあります。

喫煙習慣がある人は、歯を失う原因である
歯周病は軽視しないことです。

日頃からのプラーク(歯垢)コントロールと
半年に一度の歯科検診を心がけたいところです。
(一番は禁煙を実行することですが)