知っておきたいタバコの認知症への影響


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「喫煙」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

ちなみにお父さんの職場に、
タバコを吸うメリットをことさらに主張して、
むしろ積極的にタバコを吸っている人はいませんか?
(もしかして、お父さんが張本人とか!?)

タバコを吸うことで、

「ストレス解消になっている」
「喫煙所は社交場にもなっている」
「毎日税金を納めている」

などのメリットが得られるという人がいます。

ですが、認知症予防の観点からすると、
タバコを吸うことは、認知症の発症リスクを高める
要因でしかありません。

55歳以上の6,870人に行われた追跡調査では、
平均2.1年間に105名がアルツハイマー型認知症を発症し、
非喫煙者と比べた場合、喫煙者の発症リスクは2.3倍で
あることがわかりました。

また、別の研究では、中年期の喫煙は
高齢期における認知症の発症リスクを高め、
喫煙量とアミロイドβの沈着には相関関係が
あることがわかりました。

アミロイドβとは脳内にできるタンパク質のゴミのことで、
アルツハイマー病の原因物質とされています。

また、マウスを使った実験では、受動喫煙の場合でも、
アミロイドβの蓄積が促進されることがわかっています。

他にも喫煙が認知症の発症リスクを高めることを
示唆する研究が多くありますし、そもそも
喫煙は肺がんや脳卒中、心筋梗塞などの
全身の病気の発症リスクも高めます。

認知症に限らず、身体全体の健康を考えますと、
今からでも遅くはありませんので、禁煙を心がけたいところです。

ファイザー社が、
タバコの害や禁煙するメリットをまとめた
Webサイトを開設しています。

タバコを吸われるお父さんは
一度チェックされるとよろしいかと思います。

すぐ禁煙.jp
⇒⇒ http://sugu-kinen.jp/

なお、以前に
「タバコはアルツハイマー病を予防するかも」
と話題になったことがありますが、
ある意味真実かも知れません。

喫煙者は、アルツハイマー病を発症する前に
肺がんや心臓病、脳血管疾患で早死しやすいからですが、
それでは本末転倒の認知症予防になってしまいます、、、

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【文献】
Ott, A, et al.
“Smoking and risk of dementia and Alzheimer’s disease i
n a population-based cohort study”
the Rotterdam study. Lancet. 351: 1840?1843 (1998)

Tyas SL, et al.
“Mid-life smoking and late- life dementia: the Honolulu-Asia Aging Study”
Neurobiol Aging; 24: 589-596 (2003)

Ines Moreno-Gonzalez, et al.
“Smoking exacerbates amyloid pathology
in a mouse model of Alzheimer’s disease”
Nature Communications 4, Article number: 1495 (2013)


運動はコストパフォーマンスのよい認知症予防


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「身体不活動(運動不足)」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

認知症の危険因子の中でも
特に危険度が高いとされているのが
「身体不活動(運動不足)」です。

アルツハイマー病の危険因子の危険度を調べた
米国の調査研究から、高血圧や喫煙、うつ以上に、
運動不足が大きく影響していることがわかっています。
(Barnes DE, Lancet Neurol 2011)

運動不足が続くと、生活習慣病である
肥満、糖尿病、高血圧などにもかかりやすくなるため、
脳血管障害を招きやすくなります。

まさに運動不足を起点に、
さまざまな病気が引き起こされることになります。

また、人は高齢期を迎えた後、
加齢とともに身体機能が低下していきますが、
その身体機能の土台になっているのは「筋肉」です。

特に高齢期になると、筋肉の線維が細くなるため、
何も意識せず、身体不活動(運動不足)が続くと、
筋力が低下してきます。

筋力が衰えた高齢者は、
ちょっとした段差でも転倒しやすくなります。

転倒を機に骨折する高齢者は少なくなく、
その骨折をきっかけにして、寝たきり状態に
なってしまうこともあります。

寝たきりで認知症の発症リスクが高くなるばかりか、
QOL(人生の質)をさげることにもなります。

認知症予防のための運動としては、
生活習慣病の予防や脳内の血流量の増加につながる、
息がはずむ程度の「有酸素運動」が有効です。

有酸素運動を定期的に行うと、
記憶を司る海馬を萎縮から守ることが指摘されています。
(Erickson LI,PANS 2011)

この有酸素運動とあわせて、
筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う
「レジスタンス運動」いわゆる筋トレも取り入れたいところです。

また、ある動きを規則正しく繰り返すという
リズミカルな運動は、うつの防止にもつながります。

以上、まとめますと、
運動不足は広範囲にわたり
心身の健康に影響をもらたします。

運動不足が及ぼす範囲が広いということは、
逆に考えますと、運動習慣が身につくことで、
一気に健康に近づくともいえます。

運動は、有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)の
両方に取り組みたいところです。

しかも、運動の多くははじめるのに
さほどお金を必要としません。

運動はお金がさほどかからず、しかも
心身の健康にもたらす影響の範囲が広いということは、
かなりコストパフォーマンスがよい予防法といえます。

食べることが大好きなお父さんでしたら、
安くて美味しい、コストパフォーマンスのよいお店は
大好きなことと思います。

それでしたら、コストパフォーマンスのよい「運動」を
好きになれない理由はないと思うのです。

今日からはじめてみませんか。


血糖値が高いと認知症リスクが上昇


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「糖尿病」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

研究者の中には、アルツハイマー病を
「脳の糖尿病」と呼ぶ人がいます。

糖尿病は、インスリンの異常から
血糖値が高い状態が続く病気です。

インスリンとは、
すい臓から分泌されるホルモンの一つです。

私たちは生きてくためにはエネルギーが必要で、
そのエネルギーはブドウ糖から作られます。

「食べることは生きること」といわれるように、
エネルギー源であるブドウ糖を人は食べ物から得ています。

インスリンには、血液中のブドウ糖を、
全身の細胞が取り込んでエネルギーとして利用したり、
蓄えたりできるようにするはたらきがあります。

逆にいいますと、インスリンのはたらきがなければ、
いくら食べ物(ブドウ糖)をとろうが、
細胞のエネルギーになることはないのです。

インスリンの異常があると、
血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれないため、
血糖値が高い状態が続きます。

血糖値が高い状態が続くと、血管はダメージを受けて、
動脈硬化を引き起こしやすくなります。

動脈硬化は脳血管性認知症の発症リスクを高める要因です。

また、このインスリンの異常により、
細胞は血糖をうまく取り込むことができないため、
栄養不足の状態に陥ります。

臓器は兵糧攻めにあっているようなもので、
やがて臓器が機能不全となり、
さまざまな合併症が出てくるようになります。

なお、脳の細胞は、全身の細胞と違って
インスリンがなくても、ブドウ糖を細胞に取り組むことが
できるようになっています。
(一部の細胞はインスリンを必要とします)

では、脳の細胞にとって
「インスリンは重要ではない」といえるかというと
そうでもありません。

インスリンは、脳内では神経細胞にはたらきかけて、
記憶や学習、情報の伝達に関する非常に重要な役割を
担っていると考えられています。

以上を踏まえますと、インスリンは
生きる力そのものを支えているといえます。

しかし、インスリンの量が少なかったり、
量が正常でもうまくはたらかない場合は、
血糖を処理しきれず、血糖値が高い状態が続くようになります。

この状態が続くと、高くなった血糖を下げようと
すい臓からインスリンが過剰に分泌されます。

血液中のインスリンが過剰になりますと、
反対に脳内のインスリンの量が減少したり、
はたらきが弱くなったりすると考えられています。

そして、最後にはすい臓も疲弊して
インスリンを分泌できなくなります。

脳のはたらきに重要な役割を担っている
インスリン自体が分泌されなくなると、
その分脳のはたらきも低下することになります。

実際に糖尿病の人は、認知症と診断される前から
記憶を司る海馬が健康な人と比べて萎縮していることが、
調査研究からわかっています。

さらに研究では、
中年期に糖尿病と診断された人では、
高齢になってから診断された人と比べて、
海馬の萎縮が進んでいることもわかっています。

そういえば、血糖値が高めのお父さんも
会社の朝礼でこのようなことはありませんか?

(お父さん)「今から大事なことを3つ伝える」

(部下たち)「はい!」

(お父さん)「で、ひとつ目って何だっけ?」

アルツハイマー病は脳にダメージを与えていますが、
中年期の高血糖も脳の神経細胞にダメージを与えています。

インスリンの異常から糖尿病が引き起こされるように、
アルツハイマー病もインスリンの異常が原因ではないかとされ、
「脳の糖尿病」といわれています。

特に日本人を含むアジア人は、
欧米人と比べてインスリンの分泌量が少ないため、
糖尿病になりやすい体質となっています。

糖尿病の予防には、

・バランスのよい食事
・運動
・ストレス解消
・充分な睡眠

などが大切といわれています。

日本人は糖尿病になりやすい体質であること、
脳や血管へのダメージの蓄積を考えますと、
糖尿病の予防は中年期から積極的に取り組みたいところです。

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【文献】
Naoki Hirabayashi, et al.
“Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese:
The Hisayama Study”
Diabetes care. Sep;39(9);1543-9 (2016)


リズミカルな運動で高齢期のうつを予防


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「うつ」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

高齢期のうつは認知症の発症リスクを高めることが、
多くの研究からわかっています。

これといった理由がないのに抑うつ気分が続くなど、
うつの症状が疑われる場合は早めの対応が大切です。

昔と比べて、うつの治療法が確立されてきています。

しかし、身体の病気と同じように、
うつも予防するに越したことはありません。

うつの原因はまだ研究段階にありますが、
脳内の神経伝達物質「セロトニン」の不足が
関係していると考えられています。

セロトニンを増やす簡単な方法は、
ある動きを規則正しく繰り返すという
リズミカルな運動です。

具体的には
・ジョギング
・水泳
・早歩き
・深い腹式呼吸
・ガムをかみ続ける
などがあてはまります。

このようなリズミカルな運動を毎日30分ほど続けますと、
3ヶ月で脳内のセロトニンの放出量が増えてくるといいます。

日常生活に運動を取り入れることは、
うつだけでなく、認知症の予防にもつながります。

また、毎日日光を浴びる、
考え方(思考のクセ)を見直し、
前向きに考えて、くよくよしないことも
脳内のセロトニンを増やすことにつながります。

セロトニンは体内で生成される神経伝達物質のため、
その原料である成分を食品から摂取し続けることも大切です。

セロトニンの体内生成に必要な主成分が3つあり、
トリプトファン(必須アミノ酸)、ビタミンB6、炭水化物です。

これらを含む食品は、普段の食事で出されるものばかりで、
何か特別なものというのはありません。

具体的には

・肉類、魚類
・乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルトなど)
・大豆製品(納豆、豆腐、味噌、醤油など)
・魚卵(たらこなど)
・ナッツ類
・バナナ
・穀類(ご飯、麺類など)
・いも類

などがあてはまり、これらを毎日の食事で
バランスよくとるようにするとよいでしょう。

以上、うつの予防につながる
「脳内のセロトニン」の増やし方をみてきました。

リズミカルな運動をする、
外に出て日光に当たる、
バランスのよい食事をとる、
これらは特段難しいものではありません。

まずは少しだけでもいいので、
今日からはじめてみてはいかがでしょうか?

今日行動したことは、明日にもつながり、
結果、脳内のセロトニンを増加させ、
うつと認知症の予防につながっていきます。

————————–
【文献】
有田 秀穂 (著)
『セロトニン欠乏脳 キレる脳・鬱の脳をきたえ直す (生活人新書) 』
NHK出版 (2003)


難聴と認知症


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「難聴」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

老化はさまざまな身体機能の低下を伴います。

高齢期特有の身体機能低下の症状として、
老眼とともによく知られているのが、
「老人性難聴」です。

人は加齢とともに聴力が衰え、
高音から聞き取りにくくなります。

人の話し言葉は母音と子音で成り立っていますが、
子音は高い音域にあたります。

そのため、高齢者にとって人の話し言葉は、
言葉の最初が聞き取りにくくなるため、

「音は聞こえるけれども、何を話しているのかわからない」

という状態がしばしばみられるようになります。

ここに認知症の症状がない639人の高齢者(米国在住)を
14~18年間追跡した調査研究があります。

聴力レベルは下記の4つに分類が行われています。

正常(24db以下)
軽度障害(25-39db)
中等度(40-69db)
重度(70db以上)

認知症の発症リスクを正常な人と比べた場合、
軽度障害で1.85倍、中等度で3.0倍、重度で4.94倍
高いことがわかりました。

老人性難聴は老化現象の一つですので、
現在の医学では老人性難聴を完治することは不可能です。

まずは難聴そのものの予防が大切になります。

高血圧や糖尿病などの疾患は、
難聴になるのを早めますので、
生活習慣病の改善に努めることがそのひとつです。

そして、日頃から大音量では
音楽を聴かないことも難聴予防に効果的です。

それでも加齢にともなう聴力低下を避けることはできません。

聞こえずらさの症状を感じた場合は、
早い段階で耳鼻咽喉科に受診するのがいいでしょう。

耳鼻咽喉科の医師が、
老人性難聴によるのか他の疾患によるのか、
また、補聴器が必要かどうかを診断してくれます。

聞こえずらさを放置したままであると、
機能が使われない状態が続くため、
言葉を理解する力が低下してくることがあります。

補聴器は早期装用が望ましく、そのためには、
耳鼻咽喉科への早期受診が必要となります。

老人性難聴と診断されても、
補聴器を適切に使うことで、聞こえずらさを
補うことができます。

聞こえずらさが改善されれば、以前と同じように
人とのコミュニケーションを楽しむことができます。

人と会って、話をする機会が増えれば、
新しい情報が入ってきて、活動も活発化します。

これらはそのまま認知症予防につながっていきます。

また、難聴の重症化予防には、
・ストレスをためないこと
・耳の血流をよくすること(運動とビタミンB類の摂取)
・大きな音を避けること
がポイントになっています。

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【文献】
Lin FR, et al.
“Hearing loss and incident dementia”
Arch Neurol. Feb; 68 (2011)


認知症予防のための5つの高血圧対策


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「高血圧」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

脳血管性認知症は、
主に脳梗塞などの脳血管障害により引き起こされます。

そして、脳血管障害は動脈硬化に起因していますが、
高血圧は動脈硬化の最大のリスク因子となっています。

高血圧は、脳卒中や心筋梗塞、腎不全など
生命に関わる病気の発症リスクに加えて、
認知症の発症リスクも抱えていることになります。

さらに中年期をとうに迎えたお父さんには
ちょっと心配な事実が判明しています。

九州大学が福岡県久山町で行った疫学調査から、
高血圧と脳血管性認知症の発症リスクとの関係が
あきらかになりました。

(中年期血圧:正常→老年期血圧:正常)な人と比べたところ

(中年期血圧:正常→老年期血圧:高血圧)の場合で3.3倍
(中年期血圧:高血圧→老年期血圧:正常)の場合で5.3倍

であることがわかったのです。

中年期に高血圧であった人が、
老年期に血圧のコントロールができたとしても、
脳血管性認知症の発症リスクは依然高いままなのです。

中年期の血圧管理は、
将来の認知症予防に極めて重要といえます。

自覚症状がないからといって、
中年期の高血圧を放置することなく、
早めの改善・治療を心がけたいところです。

高血圧の予防には生活習慣の改善が欠かせませんが、
現時点では以下の5つが効果的といわれています。

1)減塩(1日6g以内)
2)肥満解消(BMI22未満)
3)節酒(日本酒換算で1日1合以内)
4)適度の運動(1日1万歩以上)
5)野菜・果物の摂取(野菜は1日5皿、果物は1日2個)

   ( )内は目安

1)の減塩について、今日からはじめようと思っても、
いきなりすべての品が薄味になってしまうと、
脳が美味しいを感じられず、挫折しがちです。

減塩を美味しく続けるコツとして、
「一品だけは今までどおりに塩分を使った料理」
にするとよいでしょう。

食べたという満足感が損なわれにくいため、
取り組みが長続きしやすくなります。

また、減塩に向いている料理法とそうでもない料理法があります。

減塩に向いているのは、水分をあまり使わない調理法で、
「焼き物」「炒め物」「あえ物」「揚げ物」などです。

ちなみに塩分代わりに酢を加えることで、
味付けの物足りなさをカバーすることもできます。

一方、減塩に向いていないのは、水分を多く使う調理法で、
「ゆで物」「煮物」「汁物」があてはまり、うま味が逃げてしまうのです。

減塩に向いていない調理法で減塩に取り組んでも、
物足りなさからなかなかに辛いものがあります。

減塩に向いている調理法で減塩に取り組むのであれば、
食べたときの満足感を得やすく、長続きするものです。

以上をまとめますと、

中年期に高血圧の予防や改善をすることが
老年期の認知症予防につながる

運動や減塩を含む食生活の改善が高血圧予防に効果的

・・ということになります。

————————–
【文献】
生活習慣病と認知症:久山町研究(2012)
九州大学大学院医学研究院精神病態医学 小原知之
老年期認知症研究会誌第19巻第3号:平成24年8月6日掲載


教育歴に関して心がけたい2つの認知症予防


2017年7月16日~20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、十分に信頼性の高い認知症の危険因子として、
ライフステージごとに9つの生活習慣リスクが指摘されました。

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【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期~高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

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この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

この中から「15歳までの教育」を取り上げて、
具体的に何をすればいいのかをみていきたいと思います。

15歳までの教育、すなわち教育歴については、
いくつかの調査研究から、教育歴が長いと
認知症の発症リスクが低下することがわかっています。

その理由のひとつとして、
人は頭を使うことで神経ネットワークが強化され、
認知力を蓄えられるという考えをあげることができます。

例えばお金の場合、若い頃に蓄えた貯金がある人ほど、
老後の貯金を切り崩しながらの生活でも余裕があります。

認知力も頭を使うことで貯金のように蓄えることができ、
蓄えた分、負けしろが増えることになります。

認知力の蓄えがある(=負けしろがある)人は、
日常生活に支障が出るレベルまで症状が進行するのに、
その分時間がかかると考えられています。

この概念をひと言でまとめた専門用語があり、
「認知予備力」といいます。

教育歴が長い人ほど、頭を使う時間が長くなり
結果、認知予備力が高くなっていると思われます。

とはいえ、教育歴は過去のことですから、
今さらいわれても、、、というお気持ちはわかります。

ですが、どうぞご安心ください。

歳をとってから知的活動を行っても、
認知機能の低下を遅らせることができるという研究があります。

まずひとつめの認知症予防のポイントとして

【(いくつになっても)頭を使うこと】

を習慣にしたいものです。

また、人は教育をとおして、
情報の取り扱い方を身につけていきます。

情報の取り扱い方といっても、
4つの要素から成り立っており、
実際には総合力が問われます。

具体的には、

1)あふれる情報の中から、ときには口外されない情報からも
  自分が必要とする情報を「入手」できる

2)その情報を正しく「理解」できる

3)その情報が信頼できるかどうかを「評価」できる

4)評価した情報を「活用」できる
  つまり、意思決定をして、行動に移すことができる

というインプットからアウトプットまでの
一連のプロセスを実行できる能力のことです。

この能力を健康に関する情報にも使うことで、
人は生涯にわたり健康的な生活を
維持・向上させることができるようになります。

ちなみに、健康情報を適切に取り扱える能力を
「ヘルスリテラシー」といいます。

教育歴が長い人は、ヘルスリテラシーの能力が
総じて高い傾向にあると考えられます。

なお、当たり前のことですが、
過去の教育歴は今更変えることはできません。

ですが、教育歴の長い人が身につけている
ヘルスリテラシーは今からでも習得できます。

ふたつめの認知症予防のポイントとして

【ヘルスリテラシー(健康情報の取り扱い方)を高める】

をあげたいと思います。

以上をまとめますと、
教育歴に関する認知症予防としては、

■頭を使うこと

■ヘルスリテラシーを身につけること

を推奨することができます。

————————–
【文献】
Sharp ES, et al.
“Relationship between education and dementia: an updated systematic review”
Alzheimer Dis Assoc Disord 25 :289-304 (2011)


認知症の9つの生活習慣リスク


2017年7月16日〜20日にわたり、英国ロンドンにて
第29回国際アルツハイマー病会議が行われました。

その中で、最も評価の高い世界五大医学雑誌のひとつである
ランセットの委員会が以下の声明を発表しています。

「認知症の発症リスクに影響する生活習慣を改善することで
 世界中の認知症の3分の1以上が予防可能である」

この声明の発表にあたり、24人の専門家が、
認知症の危険因子、治療やケアに関する研究論文を分析し、
総合的に評価を行いました。

そこから導き出されたものをまとめて、
十分に信頼性の高い要因として、ライフステージごとに
9つの生活習慣リスクをあげています。

———————————————

【9つの生活習慣リスク】

1)少年期
15歳までの教育

2)中年期
高血圧、肥満、難聴

3)中年期〜高齢期
うつ病、糖尿病、身体不活動(運動不足)、喫煙、社会的孤立

———————————————

この9つの生活習慣リスクを改善することで、
多くの人で認知症の予防もしくは発症遅延を
実現できる可能性があるということです。

また、ライフステージごとに
生活習慣リスクが分けられていることから
認知症予防は高齢者だけが行うものではないこともわかります。

生活習慣はよくも悪くも、
時間が経つごとに影響が積み重なり、
その影響は大きくなります。

むしろ、40代、50代のお父さん世代にこそ、
認知症予防に取り組んでいただきたいといえます。

「難聴」が認知症の発症リスクであることは、
最近になって注目を集めていますが、割と見過ごされがちです。

高血圧や糖尿病などの疾患は、
難聴になるのを早めますので、
生活習慣病の改善に努めることが大切になります。

また、日頃から大音量で音楽を聴かないことも
難聴予防を考えるうえでは効果的です。

そして、もし難聴の場合は放置することなく、
適切な補聴器の使用も大切になってきます。

「15歳までの教育」については、
日本人でしたら多くの人はクリアーしていると思います。

ですが、本質的に大事なことは、
教育をとおして頭を使ってしっかりと考えること。
(スマホばかりしている場合ではないのです)

そして、欲しい成果に対して、
最適な方法で、適切な努力をするという
習慣を身につけることです。

この習慣は後天的に身につけることができますので、
教育のことを今さらいわれても過去のことだしと、
ことさらに落ち込む必要はありません。

なお、認知症との関係が指摘がされている
「食事」「飲酒」「睡眠」については
エビデンス不足で今回の声明には含まれていません。

ですが、今後調査研究が進めば、エビデンスが集まって、
リストに載る可能性は十分にあります。

何より「食事」「飲酒」「睡眠」は、
他の疾患やQOL(人生の質)にも関係してくる要因ですので、
軽視していいわけではありません。

まずは9つの生活習慣リスクについて、
自身や家族がどれほど押さえているか
一度生活習慣をチェックされるといいでしょう。


医師が自分自身のために実践している認知症予防


認知症になると、記憶力や注意力などの認知機能が低下して、
日常生活に支障をきたすようになります。

少し前まで、認知症は治療も予防もできない
「不治の病」とされてきました。

ですが、近年は研究が進んで、
生活習慣によっては認知症の発症を遅らせる可能性がある
と考えられています。

認知症予防につながる生活習慣としては、
「運動」「食事スタイル」「知的活動」「人とのつながり」
が効果的とわかってきました。

ですが、実際のところ、

「認知症予防にいいのはわかったけれども、
 どれから取り組んだらいいの?」

と迷われる方も多いようです。

まずは自分がやってみたいもので、
やれる能力や環境があるものから取り組んでみる
・・がその回答になりますが、
何かしらの指針は欲しいものです。

餅は餅屋ということばがあります。

健康のことを取り扱っている医師が
取り組んでいる認知症予防のメニューを知ることは、
認知症予防を選ぶ際の指針のひとつになるでしょう。

日経メディカル Onlineが
医師会員向けに実施したアンケートによると、
以下の結果でした。

「自身の認知症予防のために取り組んでいること」

 1)運動       39.9%
 2)食生活の改善   29.2%
 3)趣味・娯楽の充実 18.7%
 4)禁煙       15.5%
 5)睡眠改善     14.6%
 6)節酒       12.7%
 7)学習療法     10.2%

   N=3,854人(複数回答)

 (出典:日経メディカル Online)

回答した医師の6割は自身の認知症予防のために
何らかの取り組みに励んでいますし、
特に「運動」に取り組んでいる医師が多いようです。

家族の言うことには聞く耳を持たない人でも、
医師の言うことには素直に聞く人もいます。

「医師が取り組んでいる認知症予防の中でも
 一番人気は運動みたいですよ」

という情報をきっかけに、
運動に取り組む人がいるかもしれません。

ある一言をきっかけに、
人がやる気を出す事例はたくさんあります。
(逆も真なりで、ある一言をきっかけに
 やる気をなくすケースもありますが、、、)

医師が自分自身のために実践している認知症予防は
行動してもらうときの働きかけのひとつとして、
頭の片隅に入れておくとよいでしょう。

行動してもらう働きかけのレパートリーは
多いに越したことはないと思うのです。


一晩の寝不足も積み重なれば、認知症の発症リスクを高める可能性


認知症の原因は70近くあるといわれていますが、
その半分近くをアルツハイマー病が占めています。

アルツハイマー病の原因物質として考えられているのが
アミロイドβというタンパク質です。

アルツハイマー病の脳内では、
アミロイドβが結合したものがみられます。

これが結果的に神経細胞を破壊し、
記憶障害などの認知症の症状を引き起こしていると
考えられています。

アミロイドβは脳の活動に起因して生産されるため、
高齢者だけでなく、若い人の脳内でも生じており、
その生産自体をゼロにすることはできません。

ゼロにできないまでも
アミロイドβの生産量を少しでも抑えれば、
認知症の予防につながるのでは?という考えで、
これまでは研究が進められてきました。

しかし、最近の米国の研究によると、
健常な人でもアルツハイマー病の人でも
アミロイドβが生産される量には
さほど違いがないことが指摘されています。

では、健常な人とアルツハイマー病の人とでは
何が違うのかというと、アミロイドβを排出する力に
差があったのです。

そして、アミロイドβの排出が促進されるのは
睡眠時であることが明らかになっています。

つまり、しっかりと睡眠を取ることは
アルツハイマー病の予防につながることになります。

とはいえ、睡眠が大切だとわかってはいても、
お父さんのように現役バリバリでお仕事をされていると、
寝る間を惜しんで、お仕事を頑張ることもあるかと思います。

「わしもまだまだ若いけんね」と、
一晩や二晩ぐらい寝なくても大丈夫という
お気持ちがあるかもしれません。

認知症予防の観点からすると、
そのようなお父さんには、
どきりとする調査研究があります。

健康な人でも一晩の寝不足で、
アミロイドβが増えることを示す実験結果が出たのです。

米国在住の睡眠障害がない健康的な
17人(35歳〜65歳)が協力した実験があり、
一晩の寝不足がアミロイドβの濃度に
どのような変化を及ぼすのかを調べました。

ここからは少し脱線して、
人の睡眠状態について
簡単に理解していきたいと思います。

まず人には2種類の睡眠状態、
レム睡眠とノンレム睡眠があると考えられています。

レム睡眠は、夢をみているときの状態で、
脳を目覚めさせる準備の眠りともいわれています。

ノンレム睡眠は、脳を休ませるための眠りで、
さらにS1〜S4の4段階に分けられています。

ノンレム睡眠のS3とS4の段階は、
特に深い眠り(徐波睡眠)となっており、
ここの段階でしっかりと眠れることは、
熟睡につながっています。

そして、レム睡眠とノンレム睡眠を
一晩のうちに約90分の周期で交互にくり返しながら、
人は睡眠をとっています。

その米国の実験では、徐波睡眠に入ったときに
ブザーが鳴るようにして、熟睡を妨げるようにしました。

このように睡眠が妨げられた翌朝には、実験に参加したどの方にも
疲労感があり、熟睡感を感じることもありませんでした。

これは睡眠時間は普段どおりの方でも同様の感想でした。

ゆっくりと眠った翌朝と熟睡が妨げられた翌朝との
アミロイドβの濃度を比較したところ、後者のほうが、
アミロイドβが増えていることがわかったのです。

また、徐波睡眠が妨げられた程度が大きいほど、
アミロイドβは増える傾向にありました。

つまり、一晩の寝不足でも、
アミロイドβが蓄積する可能性があるということです。

一晩の寝不足でもそうなのですから、
これが何十日間も続きますと、アミロイドβが
どんどん蓄積していくことは十分に考えられます。

アミロイドβはアルツハイマー病を発症する20年以上前の
40代、50代から蓄積し出すともいわれています。

40代、50代なら多少の寝不足でも
身体はまだまだ大丈夫かもしれません。

睡眠は身体よりも脳のために必要な休息となっており、
アミロイドβを排出する時間にもなっていますので、
しっかりと寝ることが大切です。

お仕事人間のお父さんにおかれましては、
就寝もひとつのタスクと捉えて、
量質ともに最高のパフォーマンスとなるように、
しっかりと休まれてほしいと思います。

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【文献】
Yo-El S. Ju, et al.
“Slow wave sleep disruption increases cerebrospinal fluid amyloid-β levels”
Brain. Published online July 10 (2017)